今週19日発表の中国GDPは前年同期比で年間目標の7%割れとなり、日本はもとより世界各国のメディアで大々的に報じられた。また、株式市場でも中国のGDPそのものの信憑性に疑惑の目を向ける関係者は多く、中国に対する市場の不信感は根強い。こうした状況を中国ウォッチャーはどのように見ているのだろうか。在中国日本国大使館の経済部で1等書記官・参事官としての勤務経験を持つ、日中産学官交流機構・特別研究員の田中修氏に最新の中国GDPを中心に解説して頂いた。
前年同期比7%割れに大した意味はない
2015年1-9月期のGDPは48兆7774億元であり、前年同期比実質6.9%と、年間目標7.0%をやや割り込んだ。これを修正された四半期別でみると、2014年の第4四半期が7.2%、2015年第1四半期7.0%、第2四半期7.0%、第3四半期6.9%である。
ただ、これは先進国の計算方法とは異なり、前年同期比となっており、成長率は前年のベースの高低に作用される。これを先進国と同じ前期比で見てみると、2014年第4四半期1.7%、2015年第1四半期1.3%、第2四半期1.8%、第3四半期1.8%の成長である。これを4倍すれば、年率換算となるが、昨年第4四半期は7%を割り込み、今年第1四半期は5%強の成長率しかなかったことが分かる。むしろ、第2四半期と第3四半期は若干持ち直しているのである。
今回前年同期比で7%を割り込んだことが大々的に報道されているが、この数字にはさほど意味はなく、むしろ前期比のトレンドをしっかり見る必要がある。
実質金利はプラスを回復
9月の消費者物価は前年同期比1.6%上昇し、上昇率は8月より0.4ポイント減速した。3ヵ月の動向では、7月1.6%→8月2.0%→9月1.6%となっている。現在、1年物定期預金金利は1.75%であるので、実質金利はプラスを回復した。これは、預金からシャドーバンキングへの資金流出を防ぐ好材料である。