軍事パレードの影響で9月工業生産が落ち込む
9月の工業生産は前年同月比実質5.7%増となった。3ヵ月の動向では、7月6.0%→8月6.1%→9月5.7%となっている。これと対応するように、社会電力使用量も、7月-1.3%→8月1.9%→9月-0.2%となっている。
しかし、これは驚くにはあたらない。9月3日には軍事パレードがあり、その日は何としても青空を演出する必要があった。このため河北の工場は全て操業停止となっており、それが前年同期比で影響が出たものと思われる。北京でオリンピック・APECが開催された際も、工業生産は落ち込んでいる。むしろ、数値が落ち込まなければ、虚偽といえよう。
手堅い消費が経済を支えている
9月の社会消費品小売総額は、前年同月比10.9%増である。3ヵ月では、7月10.5%→8月10.8%→9月10.9%と手堅い動きとなっており、これが経済を支えている。特に、1-9月期、全国インターネット商品・サービス小売額は前年同期比36.2%増となっており、新たな消費形態が拡大している。
他方、1-9月期の都市固定資産投資は、前年同期比10.3%増であった。3ヵ月では、1-7月期11.2%→1-8月期10.9%→1-9月期10.3%と減速が続いている。ただその中で、インフラ投資(電力以外)は18.1%増であり、うち、道路輸送は18.1%増、水利22.5%増、公共施設20%増と、公共事業が投資を下支えしている。
貿易黒字拡大は輸入の落ち込みに起因
9月の輸出は前年同期比-3.7%、輸入は同-20.4%となった。3ヵ月では、輸出が7月-8.3%→8月-5.5%→9月-3.7%、輸入が7月-8.1%→8月-13.8%→9月-20.4%となっている。しかし、輸出より輸入の落ち込みが大きいため、1-9月期の貿易黒字は4240.92億ドルと大きな額となっている。GDPに影響するのは輸出ではなく、純輸出(輸出―輸入)であるので、その額のトレンドに注意する必要がある。
シャドーバンキング問題の危険性は後退
9月末のM2の残高は135.98兆元、伸びは前年同期比13.1%増となった。3ヵ月では、7月13.3%→8月13.3%→9月13.1%となっている。年間の目標は12%なので、現在は金融がやや緩和気味に運営されていることが分かる。
1-9月期の社会資金調達規模に占めるウエイトをみると、実体経済への銀行貸出は75.3%(前年同期比14.2ポイント増)、委託貸付は8.4%(同4.0ポイント減)、信託貸付は0.5%(同2.4ポイント減)、企業債券は15.5%(同0.3ポイント増)、株式は4.5%(同2.1ポイント増)となっている。委託貸付と信託貸付はシャドーバンキングの重要な構成要素であり、このウエイトが下がっていることは、シャドーバンキングに対するコントロールが機能していることを意味する。
【筆者略歴】田中修(たなか・おさむ) 日中産学官交流機構 特別研究員
1982年東京大学法学部卒業、大蔵省入省。1996年から2000年まで在中国日本国大使館経済部に1等書記官・参事官として勤務。帰国後、財務省主計局主計官、信州大学経済学部教授、内閣府参事官を歴任。2009年4月〜9月東京大学客員教授。2009年10月~東京大学EMP講師。2014年4月から中国塾を主宰。学術博士(東京大学)。近著に「スミス、ケインズからピケティまで 世界を読み解く経済思想の授業」(日本実業出版社)、「2011~2015年の中国経済―第12次5ヵ年計画を読む―」(蒼蒼社)、ほか著書多数。
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