垂直統合モデルで「AWA」にも好影響?
エイベックHDがJASRACに委託していた楽曲約10万曲の管理をイーライセンスに移して一括管理すれば、自社グループが権利を保有する全楽曲の放送局における使用状況を詳細に把握することができ、マーケティングデータとしても有効活用することができる。
また著作権利用料や管理手数料を自由に設定できるイーライセンスを完全子会社化することにより、アーティストの発掘から楽曲制作、販促・プロモーション、音楽ダウンロード、著作権料回収に至るまでのバリューチェーンの上流と下流を押さえることができる。
例えるなら、農業で見られる、生産と販売を垂直統合させた「6次産業化」の音楽版のようなビジネスモデルが実現することになるとでもいえようか。
このようなモデルの有効活用が特に期待できるのは、Apple Music、Google Play Music、LINE MUSICなど、最近市場が急拡大している定額音楽配信サービスだ。通常、著作権管理事業者は、配信サービス事業者との間で包括契約を締結する方式を採用しており、エイベックスのモデルは、著作権利用料や管理手数料の交渉上有利である。
またエイベックス自身、サイバーエージェントと提携して定額音楽配信サービス「AWA」を提供しているので、柔軟性のあるマーケティング施策を打つことが可能になる。
複数の管理事業者が存在する海外の常識に近づく?
海外の状況をみると、複数の著作権管理事業者が存在し、お互いに競争し合う形態が一般的だ。
米国では米国作曲家作詞家出版者協会(ASCAP)、ブロードキャスト・ミュージック(BMI)、欧州舞台作詞者作曲者協会(SESAC)の3つが主要な著作権管理事業者であり、それぞれ個別に著作権使用料を設定・管理している。
今回のエイベックスの動きによって、JASRACの独占状態が崩れれば、むしろ複数事業者が競争関係にある海外の状況に近づくことになる。 (ZUU online 編集部)