金融業界に革命をもたらしつつあるFinTech(フィンテック)だが、そこで重要な役割を果たすべき世界最大手の銀行において、「テクノロジーに精通している幹部はわずか6%」という衝撃的な事実が調査で明らかになった。


テクノロジーの知識ある取締役に「エグゼクティブ」の肩書なし

アクセンチュアが実施した調査によると、いずれの銀行もCIOなど主任クラス以上のテクノロジー知識のある取締役には、エグゼクティブという肩書きが付いておらず、テクノロジーの知識がある幹部が在籍しているのは109社中約半数、そのうち4分の1はITに強い幹部を1人ずつしか採用していない。

テクノロジーに対応可能な取締役の割合が世界一高いとされる米国と英国でさえ16%にも満たず、スペインとスイスは7%以下、フランスは3%、ブラジル、ギリシャ、イタリア、ロシアにいたっては0%という結果だ。


ドイツ銀行の最優先事項は「テクノロジー強化」

金融業界が大きな転換期を迎えようとしている今、それに対処するだけの知識や経験をもった人材が不足しているという事実は、銀行にとって大きな致命傷となりかねない。

ITのシステムエラーが原因で、米ヘッジファンド顧客に60億ドル(約7241億5200万円)という大金を送金したにも関わらず、翌日まで解決しなかったドイツ銀行の大失態は記憶に新しい。

この事件を機に、大量の人員整理やボーナス減額など大規模な社内改革を22日に発表したドイツ銀行は、今後の最優先事項として「テクノロジー面の強化」を打ち出している。

ジョン・クライアンCEOは「これまで個体チームとトレーダーに独自のプラットフォームを利用させていたことが、事業の管理システム面に大きな混乱を招いた」として、システムの標準化と改善に本腰を入れる意思を表明。米ボーイング社CIOだったキム・ハモンズ氏をCOOに昇格させ、1年以内に取締役会に招き入れる予定である。


最適な人材確保に苦戦する銀行「容易なことではない」

このようにテクノロジーとは銀行が最も苦手とする分野であるがゆえに、今後最も重要視されるなくてはならない分野である。

アクセンチュアのリチャード・ラム氏は英ネイションワイド銀行や米シティグループのように、「ほかの銀行もテクノロジー委員会を取締役会に設置すべきだ」と提案している。

しかし元バークレイズ銀行会長、デイヴィッド・ウォルカー氏が語ったところでは、「バークレイズは昨年12月にテクノロジーに長けた幹部候補を探していたが、取締役会に招き入れるところまでは進展しなかった」らしく、元ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド会長、フィリップ・ハンプトン氏も「容易なことではない」と同様のコメントをしていることから、「テクノロジーと銀行の壁」が予想以上に大きいことが察せられる。

壁を乗り越えられなければ、大手銀行はいつまで経ってもFinTechの波に乗れる出発点となりそうだ。 (ZUU online 編集部)

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