(写真=PIXTA)
「中小企業で経理課長をしています。上司から粉飾決算をするよう指示されそうです。従わないと解雇されそうです…」。Yahoo!知恵袋で実際にあった相談である。この相談が真実かどうかは分からないが、もし不幸にしてそんなシチュエーションに遭遇してしまった場合、どう対処すべきだろうか。
法律は労働者を弱者として保護している
まず基本的な前提であるが、会社は労働者を簡単に解雇することはできない。上司の命令に従わない、ただそれだけの理由で会社は労働者を解雇できない。法律は、労働者は会社と比べて立場の弱い者であるとして保護しているのである。これを法律的な用語でいうと、不当な解雇は解雇権の濫用であるとして解雇が無効になるということだ。
では解雇が正当なものとして認められるのはどのようなときか。判例で認められているのは、次のような場合である。
第1に、労働者に「重大な」規律違反があった場合である。例えば、多額の会社の金品を着服・横領したような場合である。これに対し遅刻・欠勤が数回あったというだけでは「重大」とは言えず、上司による再三の注意・警告を経ても改善の見込みがないような場合に初めて「重大」に至ることになる。
第2に、労働者の能力に「著しい」問題がある場合である。これも単なる成績不良ぐらいでは「著しい」とは言えず、教育・訓練をしたり職務変更をしたりしてやり直しの機会を与えてもなお改善の見込みがないような場合に初めて「著しい」に至ることになる。
第3に、会社の経営状態が「著しく」悪い場合である。これも単なる業績悪化ぐらいでは「著しい」とは認められず、役員報酬減額、希望退職募集など、解雇を避けるための他の様々な手段を採ったにもかかわらず倒産必至という程度まで要求される。