(写真=PIXTA)
サラリーマンなら一度はあこがれる独立開業。いざ実行に移そうとすると、思いの外雑務が多いのも事実である。面倒な雑務に思えるものの一つが所得税計算である。
個人事業主では計算を自分で行うケースも外部委託するケースもあるが、いずれにせよ流れを掴んでおかないと必要以上に納税したり納税不足による追徴課税のリスクを負ったりすることになる。事業主たるもの、売上を伸ばす攻めと同様、節税という守りも必要だ。すでに独立した人や独立を予定している人に向け、知っておくべきことや知っていると得する所得税の話をお伝えしたい。
会社員は年末調整で所得税計算が完了する
会社員は大半の場合「年末調整」によって所得税計算が行われる。年末に近づくと扶養控除等申告書、生命保険控除証明や住宅ローン控除証明といった書類の提出が求められるはずだ。年末の時点で給与を一か所から受け取っており、その収入が2000万円以下であれば、事業主の義務として年末調整が行われる。これは法人の役員にも適用される。年末調整による所得税計算結果と毎月の源泉所得税合計の差額が還付または徴収されることで、会社員の所得税計算は完了する。
このように、会社員であれば年末調整によってほぼ自動的に所得税の計算が行われる。従業員として楽な仕組みであるが、所得税計算方法が把握されない、納税の意識が薄れる、といった弊害も指摘されている。年末調整は日本以外の国にも存在するが、アメリカなど会社員が毎年自分で確定申告をする国もある。
所得税計算の4ステップ
具体的にどのように計算していくのかを下記で紹介しよう。まず所得税は所得の形態によって計算の方法が変わる。所得の形態とは、会社員の「給与所得」、個人事業主の「事業所得」、賃貸収入等の「不動産所得」、年金やその他の「雑所得」等に分かれている。年末調整は給与所得が対象であり、事業所得に年末調整は適用されない。よって確定申告が必要となるため、所得税計算を正確に把握する必要性が生じる。
所得税の計算は、以下のような流れになる。確定申告書もこの流れに沿ったフォームになっている。
1.所得計算(収入-必要経費)
2.所得控除
3.税額計算{(所得-所得控除)×税率}
4.税額控除
①所得計算
最初に、事業による売上高から必要経費を差し引いた利益を計算する。この利益を所得と呼ぶ。青色申告をしている場合は、必要経費に加えて最大65万円を所得から減らすことができる。ここまでが所得計算だ。
②所得控除
所得控除とは所得から一定の金額を差し引くもので、最終的に所得税を少なくするための項目である。例えば誰でも適用できる「基礎控除」は38万円となっており、所得が38万円以下なら所得税は課税されない。このほか扶養控除、医療費控除など、いくつかの種類がある。ちなみに寄付金控除と医療費控除は年末調整では処理できないため、会社員でも確定申告が必要だ。
所得控除のうち社会保険料控除は厚生年金・健康保険・国民年金等の当年度納付額合計である。個人事業主は社会保険に加入できないため、国民年金と国民健康保険の納付金額になる。退職金や年金の備えに代わるものとして「小規模企業共済制度」があることを覚えておこう。毎月の積立額が所得控除となり、節税も可能となる。