スウェーデンの生命保険市場
(写真=PIXTA)


はじめに~ 歴史的な低金利環境下で、生命保険会社・保険監督当局はどのように対応してきているのか

スウェーデンは、他の北欧諸国等と同様に、ここ数年金利が低下し、歴史的な低金利環境下にある。さらには、こうした中で、ソルベンシーⅡという保険監督規制の大きな改革を迎えることになる。このような状況下で、スウェーデンの生命保険会社はどのような影響を受け、これにどう対応してきているのか。それに対して、保険監督当局はどのような対応を行ってきているのか。

今回のレポートでは、まずはスウェーデンの生命保険市場の概要について紹介した後に、これらの状況について報告する。


生命保険市場の概要

◆スウェーデンの生命保険市場(*1)

スウェーデンは、2014年ベース(*2)で、人口が975万人、GDPが570.59十億ドル、一人当たりGDPが58,538.06ドルの国である。因みに、日本は、人口が12,706万人、GDPが4,602.37十億ドル、一人当たりGDPが36,221.81ドルであることから、スウェーデンは日本の10分の1程度の市場規模を有しているといえる。

保険市場については、2014年ベースの収入保険料で、生損保合計で265billionSEK(スウェーデン・クローナ)(1SEK=14円換算で、約3.7兆円)、うち生命保険で193billionSEK(約2.7兆円)となっており、生命保険の比率が高い(*3)。

スイス再保険会社の資料(*4)によれば、2014年ベースの収入保険料規模は、保険合計で世界第21位、生命保険で世界第20位となる。全世界の保険料に対するシェアは、保険合計が0.8%、生命保険が1.1%(日本は、それぞれ10.0%、14.0%)となる。対GDP比では、保険合計で6.8%、生命保険で5.0%(日本は、それぞれ10.8%、8.4%、世界平均は、それぞれ6.2%、3.4%)となる。以上の点から、スウェーデンは世界では高水準の生命保険普及国である、と位置付けられる。

◆スウェーデンの生命保険会社

(1)会社数

スウェーデンにおいては、約400の会社が登録されている。その多くは小規模の地域損害保険会社である。市場は少数の大規模保険会社及び保険グループで支配されている。保険会社は、大きくは4つに分類される。

全国保険会社は、全国規模で事業展開している。ユニット・リンク保険会社はユニット・リンク保険のみを販売する会社である。地域保険会社は、特定地域等に限定して事業展開している。友愛組合は、主として退職年金保険を販売しているが、疾病や葬儀保険のみを販売しているケースもある。外資系会社は、支店形式等を含めて、50程度存在している。

スウェーデンの生命保険市場1

(2)市場シェア

生命保険の収入保険料の会社別内訳は、右図の通りである。上位4社で5割以上のシェア、上位7社で7割以上のシェアを有している。外資系会社のプレゼンスが徐々に増大してきてはいるが、いまだ市場シェアは限られている。これは、市場参入のためのコストが高いことに加えて、会社のブランドがより大きな意味を有しているから、と考えられている。

スウェーデンの生命保険市場2

(3)会社形態等

殆どの生命保険会社は、相互会社(*5)である。ただし、SPP、Nordea Liv、Handels banken等の大手は、株式会社化を進めてきている。各生命保険会社は、以下のように特徴付けられる。

①AlectaとAMFは、以下の職域年金保険と年金制度で述べるように、職域年金市場において、デフォルト保険会社(*6)として確固たる地位を有している。

②SEBTryggLiv、SwedbankForsakring、Handelsbanken、NordeaLivは、4大銀行の子会社であり、銀行が保険や年金事業においても重要な地位を占めている。

一方で、生命保険会社も、損害保険の兼営はできないが、損害保険会社との保険グループを形成している。例えば、生命保険の収入保険料首位のFolksamは、損害保険の収入保険料でも第3位であり、第8位のLansforsakringarは、損害保険の収入保険料では首位の会社である。