生命保険販売チャネルの状況(*8)

◆全体の状況

ブローカーがメイン・チャネルで、2013年の新契約の収入保険料ベースで28.5%を占めている。Eコマースが、これに次いで28.3%を占めている。その背景として、スウェーデンがEU(欧州連合)で最高クラスのインターネット普及率を有していることが挙げられている。直販チャネルの構成比が18.1%、バンカシュランス(銀行窓口販売)が11.8%と続くが、代理店の構成比は1.8%でしかない。

スウェーデンの生命保険市場4

◆Eコマースについて

スウェーデンでは、保険商品の販売チャネルの中で、Eコマースによる占率が高い、のが特徴的である。これは、主力商品が年金やユニット・リンク型商品等の貯蓄・投資型商品である、ことが関係している。

Eコマースでは、保険会社のウェブサイトからの購入がメインである。多くの生命保険会社がEコマースを積極的に活用している。スマートフォン・ユーザーが銀行・保険・年金を管理できるアプリケーションプログラムを開発したり、年金の情報に関する双方向のウェブサイトを開設したりしている。


【参考】医療保険を巡る状況(*9)

医療保険については、傷害保険と併せて、生命保険会社と損害保険会社によって提供されている。

◆全体の状況

医療・傷害保険の合計収入保険料は、2013年ベースで、16.1billion SEK(約2,250億円)と保険合計の収入保険料の数%程度を占めている。その内訳は概ね、7割が医療保険、2割が傷害保険、1割が旅行保険、となっている。

◆医療保険商品の状況

医療保険は、病気や事故により、就業不能状態になった場合等に、公的医療保険制度からの給付に上乗せするような形で給付が行われる。公的医療保険制度からの給付には一定の制限があり、自己負担も一定程度発生するため、これらをカバーするための保障が提供される。

妊婦を保障する保険や子供を保障する保険が発売されている。例えば、妊婦保険は、出産時に子供の障害が発生した場合、妊婦自身の死亡時、危機的療法時の費用等の保障を提供している。また、子供保険は、子供が病気や事故により、将来にわたって就業不能になるような障害状態になった時に、保障を提供している。

◆医療保険の普及の現状

医療保険の8割は、企業が従業員に提供するという形や、労働組合による企業保険といった形で、販売されている。医療保険の加入者数は、2014年末で約62万人、加入率は6%~7%となっている。

Insurance Europa(欧州保険・再保険協会連合)が2015年8月に公表した資料によれば、加盟32カ国中、スウェーデンの1人当たりの生命保険料は、加盟国平均の2倍以上で第7位だが、1人当たりの医療保険料は、平均の1割程度で第21位となっている。他の欧州諸国との相対的な比較の中でも、スウェーデンにおいて、医療保険は現状ではあまり普及していない、といえる。

これは、現在のスウェーデンの公的医療保険制度が、質やコストの面で国民に高く評価されており、一部の自己負担で良質の医療保障が得られることと関係している。ただし、公的医療保険制度は、医療へのアクセスという点では課題を抱えており、ここを中心に民間医療保険に対するニーズが存在している(*10)。

◆今後の動向

今後さらなる高齢化を迎えていく中で、公的医療保険の財源にも制約がある。従って、アクセスの改善やより良質な医療保障を受けるために、民間医療保険の市場がさらに開拓されていくものと期待されている。

具体的には、スウェーデンでは、専門医の診察・治療を受けるためには平均35日の待ち期間があり、手術を受けるにはさらに最大3ヶ月待たなければならない。これに対して、ある民間医療保険の商品によれば、4営業日以内に専門医にアクセスでき、必要であれば15日以内に手術を受けることができる、としている。

なお、民間医療保険へのニーズの高まりの背景には、個人の可処分所得の進展により、個人による民間医療保険への加入余力が生まれてきていることもある、と言われている。