生命保険会社の資産運用の状況
保険会社の総資産は、3,878billion SEK(約54.3兆円)で、そのうちの86%の3,348billion SEK(約46.9兆円)が生命保険会社の総資産である。生命保険会社の資産構成は、下記の左図の通りである。
株式のシェアが国内外合わせて25%、投資信託のシェアが33%と、リスク性資産への投資割合が高い。一方で、国内外の債券のシェアは31%と、先進諸国の中では、債券の割合が低いのが特徴的である。なお、国内債券の内訳は、31%が国債・地方債、60%が銀行債や住宅担保債券、9%がその他債券、となっている。
EIOPA(欧州保険年金監督機構)の分析によれば、スウェーデンの十分に流動性のある債券市場は10年物まで、とされている。スウェーデンの10年国債利回りの推移は、上記右図の通りである。
他の先進諸国と同様に、ここ数年金利が継続的に低下してきており、現在は1%を下回る水準で推移している。これを受けて、保険会社のインカムベースでの資産運用利回りも低下してきており、資産運用収益を巡る状況が厳しくなってきている。
低金利環境下における生命保険会社の状況とそれへの対応
ここまで、スウェーデンの生命保険市場(含む医療保険)の概要を述べてきたが、ここでは、歴史的な低金利環境下における生命保険会社の状況と、それへの生命保険会社及びスウェーデンの保険監督当局であるFI(Finansinspektionen)の対応について報告する。
◆低金利継続による影響度が大-EIOPA等による分析-
EIOPAが公表した「Financial Stability Report May 2015」によれば、スウェーデンは、主要国の中ではドイツとともに、生命保険会社の、①資産と負債のデュレーションのミスマッチが大きく、②資産と負債のIRR(内部収益率)(*11)の差がマイナスになっている国であり、低金利の継続による影響を大きく受ける国であるとされている。
下記の図が、EU各国の資産と負債のデュレーションのミスマッチの状況、IRR及びデュレーションのミスマッチの状況を示している。これによれば、スウェーデンの場合、資産のデュレーションが約4年、負債のデュレーションは約15年で、約11年のデュレーション・ミスマッチがあることになる。
資産サイドでは、国内債券市場が限定されており、保有債券の平均デュレーションが、国債は5.5年、社債は2.8年と他国に比べて短い。負債サイドでは、主力の年金商品が、積立期間だけでなく支払期間も存在していることから、デュレーションが他国に比べて長くなっている。
この結果、現在のような低金利環境が継続した場合には、大きな再投資リスク等を抱える形になっており、将来の収益性に大きなマイナスの影響を与えることになる。ただし、スウェーデンの場合、ユニット・リンク型保険の割合が半数近くを占めていることから、ドイツに比べれば、会社全体として見た場合のリスクは若干低い、と考えられている