◆生命保険会社の対応-商品面・運用面での対応-
(1)保険商品の保証利率の引き下げ
これまで、スウェーデンの(ユニット・リンク型でない)保険商品は比較的高い保証利率を付して、販売されてきた。スウェーデンの保証利率水準は、1998年までは4%、その後3%に引き下げられたが、金利の低下に伴い、現在は2%未満となっている。現在の保有契約の平均保証利率は、3%~3.5%の水準にある。
(2)新たな保険商品の提供
低金利環境が継続する中で、生命保険会社は、伝統的な養老保険の保証利率のさらなる引き下げを行ったり、ユニット・リンク型商品の販売へのシフトを行ってきている。
最近では、伝統的な保証付商品の販売を停止し、代わりに新たな商品を提供してきている。例えば、Scandiaは、満期時に既払保険料保証のみを行う商品を発売している。これは、経過の浅いうちは、株式等のハイリスクの資産への比率を高くし、退職年齢が近づくにつれて、低リスクの資産へシフトさせていく商品である。
従来の伝統的な保証付商品からの撤退等を図り、新たな商品開発を進める動きは、ドイツ等の他の継続する低金利環境に悩まされている国々でも見られている。ある意味で類似した状況にある日本においても、保険商品に対する国民意識の違いという要素を踏まえたとしても、一定参考にすべき点であると考えられる。
(3)運用面での対応
運用面では、より高い収益を求めて、オルタナティブ投資(*12)やカバードボンドへの投資が増加してきている。FIもこれらの動向には注目しており、過剰なリスクテイクにならないように監視していく意向を示している
◆保険監督当局の対応-責任準備金評価用の予定利率設定方式の改定-
スウェーデンの責任準備金評価については、ソルベンシーⅡを先取りする形で、市場整合的な評価が導入されている。FIは、金利の低下に対応して、2012年に、責任準備金評価用の予定利率にフロアー・レートを設定している。さらに、2013年11月には、「責任準備金評価利率に関する規制及び一般ガイドライン」を改定している。これには、商品毎に使用利率の算出方法が規定されている。
新たなルールでは、例えば職域年金保険の場合、EIOPAが定めている手法と同様に、期末金利をベースとしつつもUFR(終局フォワードレート)を使用して割引率を設定する考え方を採用している。
具体的には、スウェーデン・クローナ(SEK)の場合、UFR4.2%、LLP(最終流動性点)は10年、LLPからUFRへの収束期間は10年と定めている。この方式は、ソルベンシーⅡでのリスクフリー・レート設定方式の特別取扱に整合的なものであり、その詳細については、次の7―1|で述べる。
このように、FIは、昨今の低金利環境に対応する形で、いくつかの改定を行ってきている。これについて、FIは、こうした見直しが必要なものであり、これにより、生命保険会社が、短期的な視点のみから資産の再配分を行うことなく、より長期的なアプローチで投資を行うことができるようになる、と述べている。