◆まとめ

スウェーデンの生命保険会社は、社会保障制度を補完する立場から、年金等の貯蓄・投資性商品を主力として販売する一方で、自国の債券市場が限られているという環境下で、リスク性資産への高い比率の投資を行っている。その結果として、資産と負債のデュレーション・ミスマッチが極めて高くなり、新たなソルベンシーⅡ規制の下で、高い資本水準を要求される、という状況に置かれている。

先に述べたように、この状況は今後も短期間で大きく変更することはできない。こうした状況下で、ソルベンシーⅡの導入及びさらなるその見直し等の動きも見据えつつ、今後の経営の方向性を判断していかなければならない。

スウェーデンの保険監督当局であるFIや各生命保険会社が、今後どのような方針に基づいて、リスク・資本管理等への対応を図っていくのかについては、極めて興味深いものがある。今後も、スウェーデンの生命保険市場の動向については、注視していくこととしたい。

(*1)以下のスウェーデンの生命保険市場に関するデータは、特に断りがない限り、保険会社の業界団体である「InsuranceSweden」が作成している「INSURANCEINSWEDENSTATISTICS2014」に基づいている。
(*2)IMFの「WorldEconomicOutlookDatabaseOct2015」に基づいている。
(*3スウェーデンは、InsuranceEuropa(欧州保険・再保険協会連合)に加盟する32カ国の中では、保険料ベースで保険のうちの生命保険の比率がフィンランドに次いで、2番目に高い国である。
(*4)sigmaNo4/2015「Worldinsurancein2014:backtolife」「2014年の世界の保険:活気を取り戻す」
(*5)スウェーデンにおける相互会社には、①契約者によって所有される伝統的な相互会社、②外部の所有者も存在する非営利有限責任会社であるハイブリッドな相互会社、の2種類が存在している。
(*6)「デフォルト保険会社」とは、「初期設定された保険会社」という意味で、職域年金の運用管理等について、加入者である従業員が自主的な選択を行わなかった場合に、自動的に選択される保険会社を意味している。
(*7)保険商品による貯蓄は、2014年ベースで、金融商品全体の44%を占め、重要な位置付けを有している。
(*8)ここでのデータ等は、timetric「LifeInsuranceinSweden、KeyTrendsandOpportunitiesto2018」による。
(*9)ここでのデータ等は、timetric「LifeInsuranceinSweden、KeyTrendsandOpportunitiesto2018」による。
(*10)HCP(HealthConsumerPowerhouse)(=欧州全体のヘルスケアの比較を行っているスウェーデンの会社)が公表している「EuroHealthConsumerIndex(EHCI)2014」によれば、欧州37カ国の医療制度の比較で、スウェーデンは総合評価では12位であるが、アクセス(治療の待ち期間)では35位と評価されている。
(*11)「IRR(内部収益率)」とは、現在の投資額と将来の受取金額(キャッシュ・フロー)の現在価値が等しくなるような割引率を指している。
(*12)「オルタナティブ投資」とは、株式や債券等の伝統的な資産運用とは異なるそれ以外(ヘッジファンド、プライベート・エクイティ・ファンド、コモディティ(現物、先物)、不動産等)を投資対象とし、様々な投資手法を用いたり、異なったリスクを持つ投資対象を組込む等して行う投資のこと。
(*13)これらの具体的な内容については、筆者による、基礎研レター「EUソルベンシーⅡの動向-長期保証措置(MA・VA・経過措置)の適用申請・承認等の状況はどのようになっているの-」(2015.10.13)を参照していただきたい。

中村亮一
ニッセイ基礎研究所 保険研究部

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