中国の習近平総書記は、党五中全会(党中央委員会第5回全体会議)において「5大発展理念」を提起し、新常態を見据えた第13次5ヵ年計画を推進する決意を示した。新華社が「重大な理論の刷新である」と絶賛する5大発展理念とはどのようなものなのか。在中国日本国大使館の経済部で1等書記官・参事官としての勤務経験を持つ、日中産学官交流機構・特別研究員の田中修氏に「5大発展理念」を読み解いて頂いた。


第13次5ヵ年計画建議を読み解く(2)

前回、第13次5ヵ年計画は、中国経済が新常態に入って最初の5ヵ年計画であることを説明した。これを背景に、習近平総書記は党5中全会において、「経済社会発展の新たな趨勢・新たなチャンス・新たな矛盾・新たな試練に対し、第13次5ヵ年計画期間の経済社会発展を計画するには、新たな発展理念を確立し、新たな発展理念を用いて発展行動をリードしなければならない」と述べ、①イノベーション、②協調、③グリーン、④開放、⑤共に享受、という5大発展理念を提起したのである。

これは、第13次5ヵ年計画の策定担当官庁である、国家発展・改革委員会の徐紹史主任の解説によれば、具体的に次の内容を指している。


「イノベーションによる発展」を推進する

イノベーションは、経済発展をリードする第一の動力である。新常態の下で、中国が直面する最大の試練は、「中等所得の罠」を乗り越えることであり、この難題を突破するための根本的な方策は、イノベーションによる発展である。

第12次5ヵ年計画期間、中国の科学技術のイノベーションは大きな進歩を得た。しかし、いまだにイノベーション能力・自主的な技術・知名度の高いブランドに欠けており、科学技術の成果の産業への転化率・科学技術の進歩への寄与率は、先進国に比べなお大きな格差がある。

このため、第13次5ヵ年計画期間は、イノベーションを国家発展の核心に位置づけなければならない。


3つの問題を克服し「協調的な発展」を推進する

中国は、発展の協調性・バランスの面で、際立った3つの問題が存在する。その3つの問題とは、①都市と農村の所得格差が依然かなり大きく、都市の中でも貧富の差が拡大している、②地域の発展がアンバランスであり、東部の経済発展に比べ、中西部が落後しており、とくに東北地方の衰退が著しい、③世界第2位の経済大国となりながら、国民の資質・モラルが十分に向上していない……である。

このため、第13次5ヵ年計画期間は、協調的な発展という要求に基づき、地域間の協同、都市・農村の一体化、経済とモラルの協調的な発展を引き続き推進しなければならない。