日本語で「小康」といえば、病状などの悪い状態がひとまず収まったかのような意味で使われることが多い。株式市場でも急落した翌日など、一時的に下げ止まった局面で「小康状態」という言い回しが用いられることがある。しかし、中国においては「小康」はかなり違った意味を持つ。折しも習近平総書記は、党5中全会での建議案において2020年に「小康社会」の全面的実現を掲げているが、それは具体的にどのような社会なのであろうか。日中産学官交流機構・特別研究員の田中修氏に解説して頂いた。

第13次5ヵ年計画建議を読み解く(3)

第13次5ヵ年計画の第1の特色は、中国経済が「新常態」に入って最初の5ヵ年計画ということであった。これに加えて、習近平総書記は、党5中全会に対する建議案の説明の中で、「第13次5ヵ年計画は、小康社会を全面的に実現する最後の5ヵ年計画である」とも強調している。これが第13次5ヵ年計画の第2の特色である。

中国における「小康」とは、「いくらかゆとりのある」という意味である。中国では、2000年に小康社会を「基本的に」実現したとされる。しかし、新しい目標では2020年に小康社会を「全面的」に実現しなければならず、このため「建議」では、5つの目標・要求を提起している。

①経済の中高速成長を維持する

2020年に、GDPと都市・農村平均個人所得を2010年比で倍増することが要求されている。これを実現するため、習近平総書記は、党5中全会において「2016-2020年の経済の年平均成長率は6.5%以上が最低ラインである」と述べた。

このため、第13次5ヵ年計画の成長率目標は6.5%に確定したかのような報道がなされたが、共産党中央財経領導小組弁公室(事務局)の楊偉民副主任は、「成長率目標は来年3月の全人代で政府要綱が承認されて、はじめて確定する」としている。

②人民の生活の質・水準を普遍的に向上させる

雇用・教育・社会保障・住宅保障といった、民生の保障・改善にしっかり取り組まなければならない。習近平総書記は、「一方で小康社会の全面的実現を宣言しながら、他方でなお数千万の人口の生活水準が貧困基準ライン以下にあることは許されない。農村貧困人口の脱貧困は、小康社会の全面的実現の最も困難な任務である」と、特に農村の脱貧困を強調している。

中国の貧困基準では、全国でなお7017万の農村貧困人口がいる。これを、産業支援や転職、他の良好な土地への移転などの政策を通じて、今後毎年1000万人ずつ減らし、最終的に2000万人余りの労働能力を完全あるいは部分的に喪失した貧困人口を残す。この人々については最低生活保障の対象に全部組み入れることにより、脱貧困を実現しようというのである。