③国民の素質と社会の文明程度を顕著に向上させる

小康社会を全面的に実現するという目標を達成するには、経済を発展させるだけでなく、一般国民の思想・道徳、科学・文化のレベルをこれに合わせて引き上げなければならない。

このため、文化の発展に対する政策支援を強化し、国家の文化ソフトパワーを高め、文化産業を国民経済の支柱的産業とし、同時に中華文化を世界に発信して、感化力・影響力を引き続き拡大しなければならない、とされている。

④生態環境の質を総体として改善する

良好な生態環境は、国民の生活の質を高めることになり、小康社会を全面的に実現するための欠かせない要素である。現在中国では、資源の制約・環境汚染・生態システムの退化が深刻になっている。

そこで、グリーンな発展の理念をしっかり確立し、第13次5ヵ年計画期間には、エネルギー・資源使用効率を大幅に向上させ、エネルギー・水資源の消費、建設用地、炭素排出総量を有効にコントロールし、主要汚染物質の排出総量を大幅に減少させ、同時に省エネ・環境保護産業を大いに発展させなければならない、とされている。

⑤各方面の制度をより成熟させ、定型化する

第13次5ヵ年計画期間は、改革を全面的に深化させ、開放を一層拡大し、各分野の基礎的な制度体系を作り上げなければならない。

とくに、経済体制改革は改革の重点であり、資源配分において市場の決定的役割を発揮させ、政府の役割を更によく発揮させることが重要となる。具体的には、政府の機能を転換し、行政の簡素化・権限の下方委譲を進め、権限を開放すると同時に、必要な部分では管理を強化し、公共サービスをより改善するのである。

【筆者略歴】
田中修(たなか・おさむ)
日中産学官交流機構 特別研究員
1982年東京大学法学部卒業、大蔵省入省。1996年から2000年まで在中国日本国大使館経済部に1等書記官・参事官として勤務。帰国後、財務省主計局主計官、信州大学経済学部教授、内閣府参事官を歴任。2009年4月〜9月東京大学客員教授。2009年10月~東京大学EMP講師。2014年4月から中国塾を主宰。学術博士(東京大学)。近著に「スミス、ケインズからピケティまで 世界を読み解く経済思想の授業」(日本実業出版社)、「2011~2015年の中国経済―第12次5ヵ年計画を読む―」(蒼蒼社)、ほか著書多数。