お金と幸せ
(写真=PIXTA)

「お金で幸せは買えるのだろうか」。従来の学説によると、答えは「ノー」だが、ハーバード・ビジネススクールのとある教授によると、答えは「イエス」だ。「お金の使い方による」との条件付きではあるが……。


「消えるもの」のほうが「残るもの」より人を幸せにする

その教授とは、消費者心理・行動の専門家であるマイケル・ノートン氏だ。同氏は2015年11月3日、ニューヨーク・タイムズ紙の金融ニュースサイト「DealBook」主催の招待制講演会「DealBook Conference」の中で自身の学説を語った。

ノートン教授によると、人は旅行などの「経験」にお金を使うほうが、家や車などの「モノ」にお金を使うより幸福度が高まるのだという。だが実際には、人は資産の大部分を幸福度が高まらないもの、すなわちモノに使うことが多い。家や車に大金をつぎ込む人が多いが、同教授によるとどれほど大きい家を購入したとしても、どんなに格好のよい車を購入したとしても、購入前と後で幸福度は全く変化しないそうだ。


旅行者が最も幸福を感じるのは旅行の最中ではない

お金を支払った対象が実際に手に入る前、すなわちモノであれば届く前、経験であればその当日が来る前の幸福度も両者で異なるそうだ。「経験は生じる前ですら、モノより幸福度を高めてくれるのです」とノートン教授は語る。

たとえば高額商品を購入した場合、ストレスを感じながら商品の到着を待つこともある。値段の割に良いテレビやスマートフォンを買えたかどうか、予定日通りに商品が到着するか、到着時に破損していないかと気を揉んだりするのだ。そのため、購入した商品が到着する前から、不安を感じやすい。商品の到着後は、テレビやスマートフォンの設定作業にストレスが掛かり、実際にその時点で購入したモノの価値が薄れたように感じてしまうのである。

一方、旅行やデートでの食事などといった「経験」を待つ場合はワクワクしながら待つことができる。同教授によると、実際に旅行に行く人が最も幸福を感じるのは旅行の最中ではなく、出掛ける一日前なのだという。

ハネムーンを例として挙げると、行く前に夫婦は「きっと、(ハネムーン先では)ビーチでワインを飲みながら、寄り添ってお互いの目を見つめ合うのね」なんて言うかもしれない。だが実際には、そうした想像ほど良いことが起こらない場合もある。飛行機は遅れたり、ホテルは期待外れだったり、さらに最悪のケースとしては、今まで気が付かなかった相手の欠点に気がつくといったこともあるわけだ。

だが経験が終わった後は、記憶は塗り替えられ、幸せな瞬間のみを記憶していることが多い。新婚旅行の最中には相手にイライラしていた事など、数年後にはすっかり忘れてしまうのだという。

経験は時間が経っても、価値が下がることはない。だが、モノに関してはそうではない。たとえば、新しいテレビを買ったとしても、隣に住む人がもっと良いテレビを買った場合は羨ましく感じたりし、モノの価値が下がったように感じる。「経験」の良い所は、消えてしまうことで、終わってしまったらその経験の価値が下がることはないのである。


カナダやウガンダなどで幸福感を聴く調査を実施

今回の講演会の中では語られていないが、ノートン教授は、他人にお金を使うことも幸福度を高めると主張している。2011年にTEDトークに出演した際に語られた幸福度を測るために行った実験と、そこから導き出された結論について紹介する。

同氏の行った実験は、被験者にお金の入った封筒を渡し、その半分の人には自分のためにそのお金を使うように、残り半分の人には他人のためにお金を使うように指示するものだった。そしてその後お金を使う前と後の幸福感を聴くというもので、カナダ、ウガンダ、ベルギーなどさまざまな場所で行われた。

結果は、金額の多寡に関わらず、他人のためにお金を使った人は幸福感が上がり、自分のためにお金を使った人は幸福感に変化がなかった。他人のために使う、とは言っても使い方はさまざまで、たとえば被験者は、気になる女性を夕食に誘う、母親にプレゼントを買う、マラリアに苦しむ息子を持つ友人に病院代としてお金を渡す、などといったことをしていたが、内容に関わらず一様に幸福感が向上したという。

幸福感を得るためには、「お金はどう使ったかではなく、誰に使ったかが重要」だとノートン教授は結論づけている。

他人にお金を使う、というのも、「経験」の一つだろう。たとえ他人に物を贈ることにお金を使ったとしても、贈った本人には物は残らず、贈ったという経験のみ残るからだ。「お金を使っても幸せを感じないなら、それは適切な使い方をしていないからです」と同氏は言う。

もしすでに多額のお金を使ったにも関わらず、幸せを感じていない方がいたら、自身のお金の使い方を見直してみるのも良い方法かもしれない。(ZUU online 編集部)

【関連記事】
・「暮らしやすい国ランキング」日本19位 韓国25位で「周囲が信頼できる」は4人に1人
・投資家必見!IPO当選確率を上げる5つの方法
・日本人大富豪ランキング トップ20の顔ぶれはこれだ!
・社会人注目!日経新聞・四季報などがネット上で全て閲覧可!その意外な方法とは
・なぜ今「投資漫画」なのか。『インベスターZ』著者が語る「お金」とは?