ネット証券
(写真=PIXTA)

日本のインターネット株式取引口座数は、2015年9月末時点で1940万口座を超えている。最近では毎月10万口座以上のペースで増えており、半年後には2000万口座を突破する勢いだ。

すでに株式取引の主要なプラットフォームは、電話や店頭からインターネットに移行したといえるが、こうした事業構造の変化を早くから見抜きネット取引に経営資源を集約しているネット証券は、果たして先見の明のある有望銘柄なのだろうか。


ネット証券ビジネスの潜在成長力は極めて高い

2014年の東証の株式売買高は7901億株だった。2004年が3788億株だったため、10年間で2倍近く増加したことになる。一方、2014年の上場企業の時価総額は525兆円にとどまっている。2000年以降のピークだった2006年の時価総額(550兆円)を下回る中で売買高が増加した背景には、東証のシステム整備など市場の引活性化に向けたさまざまな取組みがある。

業者サイドでは、とくにネット証券が預金と比べハードルが高いと思われがちな株式・FX取引などの利便性や経済性を高めることにより、取引者数・金額の増加に大きく貢献している。超低金利が構造的に定着した状況下で株式投資に関心を持つ人は増えており、使い勝手がよく手数料の安いネット証券は今後も多くの人を引き付けるだろう。2015年9月末の銀行預金口座数が7億9746万であることを踏まえれば、依然として多くの潜在顧客が存在すると考えられる。


競争は一段と激化

今やネット取引サービスを提供していない証券会社は少数派だ。その意味では、ほぼ全ての証券会社がネット証券ともいえる。多数の外務員や店舗を抱えている従来型の証券会社もそれらを徐々に縮小し、個人顧客の大半をネット取引へ誘導するだろう。

ネット証券は、多くの顧客の支持を得られる使い勝手のよいサービスを提供する上で多額のシステム投資を避けられない。大手金融グループは過去の蓄積や法人部門の収益が豊富なため資金確保の心配はないだろうが、独立系ネット証券は一定規模の顧客数や取引高を維持できなければ資金不足に陥りかねない。

その結果、必要な投資を怠ればサービス力が低下し顧客離れにつながる。顧客が減ればスケールメリットを活かした低い手数料を維持できなくなるため、一段と顧客離れに拍車がかかるというスパイラルに陥ってしまう。

ネット証券のライバルは従来型の国内証券会社だけではない。ネットビジネスの特徴を踏まえれば、海外勢との競争も念頭に置かなければならない。金融ビジネスは各国の当局により規制されているため、一般のEコマースのように海外企業が自由に参入できる訳ではない。

もっとも、日本の居住者が海外金融機関に口座を開いたり、日本で登録した証券会社が実務の大半を海外子会社等に委託したりすることも可能なため、海外企業が日本のネット証券ビジネスに参入してくる可能性は十分にある。


ネット証券がM&Aのターゲット?

機関投資家や大手法人および一部富裕層を除く大多数の投資家がネット取引へ移行することを想定すれば、多くのネット証券の経営形態は数年内に変化している可能性が高いだろう。

三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> 傘下のカブドットコム証券 <8703> は、何れ同じグループの三菱UFJモルガン・スタンレー証券と合併するか、同社のネット証券ビジネスを譲り受けるとみられる。合併の場合、カブドットコム証券はTOBにより三菱UFJフィナンシャル・グループの100%子会社になると予想されるため、プレミアム期待で同社に投資することも一案だ。大和証券グループ本社 <8601> が18.6%、楽天証券が10.1%出資するマネーパートナーズグループ <8732> も同様に大株主の主導により再編されるのではないか。

岡三証券グループ <8609> 、松井証券 <8628> 、マネックスグループ <8698> 、マネースクウェアHD <8728> などの中堅証券系、楽天 <4755> 、GMOクリックホールディングス <7177> 、SBIホールディングス <8473> など上場IT企業の傘下証券会社も単独での生き残りは厳しくなり、何れ合従連衡の動きが本格化すると予想される。


M&Aで重要な評価ポイントは取引ツールと取扱商品数

ネット証券の再編時に主導権を握るのは資本力のある企業だ。三菱UFJ、三井住友、みずほの3大グループを始め国内外の大手金融機関が中心となりM&Aを進めるだろう。

一方、再編対象の証券会社は、取引ツールと取扱商品の充実度が重要な評価ポイントになる。みんなの株式の調査によれば、ネット証券の選択理由の第1位は手数料の安さ(35.9%)だが、これは資本力のある大手金融機関グループ傘下では容易に実現できる。それよりも第2位の取引ツールが充実(22.2%)、第3位の取扱商品が多い(16.2%)などで評価されるための工夫や仕組みに価値がある。

取引ツール評価第1位の岡三オンライン証券、取扱商品評価第1位のSBI証券などが買収候補先として高く評価されるのではないか。とくに総合ランキング1位で保有口座数でも他社を圧倒的に引き離しているSBI証券が再編の中心になると目される。 (ZUU online 編集部)

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