(写真=PIXTA)
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中国の人民元が通貨としての国際的価値を上昇させている。SDRバスケット通貨への採用が決まり、12月18日には米国議会がIMFの中国の出資比率を上げることを承認した。一方で12月16日のアメリカ利上げに関連して為替は人民元安に振れている。外貨流出も続いているようだ。

このように昨今、人民元の話題には事欠かないが、もう一つ新100元札の発行(11月12日)もあった。それらを念頭に、改めて中国人とお金の関係について考察してみたい。

新札発行、主眼は偽造防止

11月12日中国人民銀行(中央銀行)は新100元札を発行、翌13日から市中で流通が始まった。中国のお札は1999年の建国50周年を機に大きく変わった。それまで低額札の肖像は少数民族や労働者で、100元札(最高額)は毛沢東プラス3人の元勲だった。

それがこの年10月1日の100元札から、すべて毛沢東の肖像に一本化された。この時は発行と同時に“にせ札”が出回り、世界をあきれさせた。

その後2005年8月31日から改訂版が発行され、今回は10年ぶりに出る再改定版となる。毛沢東の肖像や人民大会堂のモチーフなど基本は変わっていない。新聞を見ると表面4カ所、裏面3カ所に偽造防止の仕掛けが施されたているという。ハイテクの光彩光変数字、透かし人像、彫刻凹印などと解説にある。

その効能を評価できる立場にないため何とも言えないが、さすがに16年前とは違い、同時に偽札が見つかったという話は聞かない。株価も落ち着き、社会は平静を保っているようだ。

毎週のように銀行幹部が背任容疑で逮捕?

まだ市中に出回る量は少なく、ほとんどの人は新100元札を拝んでいない。したがって、その受け取りにはしばし躊躇するだろう。ところが銀行ATMまでが受け入れを「躊躇」したり、紙幣識別機が偽物としてはじいたりしてしまうとなると問題だ。

実際にこの種のトピックがネット上をにぎわせた。スーパーならまだしも銀行ですら準備ができていない、というのは日本では信じがたい。しかし中国の銀行員はとても危なくて、情報など与えられないのである。日本のメガバンク中国駐在員に聞くと、毎週のように「○○銀行のX支店長が背任で逮捕」などの業界通信が配信されてくるという。

また中国人の中小企業経営者と話していると、「いやあ、銀行の我が社の担当が不正融資で逮捕されちゃてね」と明るくしゃべり始めて驚いたこともある。困っている様子ではなく、よくある普通のトピック風だった。人間関係を再構築する手間などは一向に苦にならないらしい。

また融資額に応じたキックバックも慣例と言われている。新札の事前情報などを得れば、こうした輩が何をしでかすかわからない。トピックの発生には必然性があったのだ。