(写真=PIXTA)
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「デビットカード」と聞くと、最近放送されている「Visaデビット」のテレビCMを思い出す人が多いのではないだろうか。クレジットカードとは違い、使った時点で銀行口座からお金が引き落とされる「デビットカード」は海外では浸透しているが、日本では利用者はそう多くない印象だ。

デビットカードの保有率は2割弱?

実際どのくらいの人が使っているのだろうか。JCBの調査によると、デビットカードの保有率は16.4%、利用率は5.8%という。カードに入会した理由の1位は「金融機関のキャッシュカードについてきたため(61.2%)」だそうだ(「クレジットカードに関する総合調査2014年度版」)。保有率に対して利用率が低いのは、「キャッシュカードについてきたため保有しているだけ」というから、持っている人も積極的に利用しようとして持っている人は多くないのだろう有者が多数だということが大きく影響していそうだ。

デビットカードは銀行などの金融機関が発行するカードで、ショッピングの際に利用すると個人の預金口座から即時に代金が支払われる仕組みだ。手持ちの現金がなくても利用できるのはもちろん、預金残高内でしか買い物ができないので使い過ぎる心配がないことが特徴だ。クレジットカードだと支払いが先送りできるメリットはあるが、口座にある残高以上の額の買い物ができるため、「ついつい使いすぎてしまう」という人もいるだろう。

国内で利用されているデビットカードには大きく2種類がある。まずはVISAやJCBなどクレジットカードの国際ブランドが発行する「国際ブランドデビットカード」。そして国内の銀行のキャッシュカードと一体となった「J-Debit」だ。加盟店の数では「国際ブランドデビットカード」のほうがかなり上回っている。

ネット銀行などで新たな取り扱いも

「国際ブランドデビットカード」の決済はVisaやJCBなどの国際ブランドが行い、「J-Debit」の決済は対応する金融機関が行う。また国内の銀行の扱う「J-Debit」はキャッシュカードとの一体型となっているが、そのほかにも銀行では「国際ブランドデビットカード」の発行も行っている。Visaデビットカードはりそな銀行、あおぞら銀行、スルガ銀行、三菱東京UFJ銀行などが、JCBデビットカードは千葉銀行、大垣共立銀行、北洋銀行などが発行している。

また楽天銀行やジャパンネット銀行といったネット銀行では2006~07年頃からVisaデビットカードの発行を開始している。ソニー銀行は円やドル、ユーロ、ポンドなど11通貨の決済に対応したVisaデビット付きキャッシュカード「Sony Bank WALLET」を発行。住信SBIネット銀行のVisaデビット付きキャッシュカードは、円と米ドルの2通貨の決済に対応するという。

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ビジネスパーソンがおさえるべき外貨・外貨建て商品投資の新常識

ポイント還元率やネック?

海外では欧米を中心にとてもポピュラーなデビットカードだが、日本ではあまり普及してこなかった。それはなぜだろう。

利用状況から見てみよう。日本クレジットカード協会の「各国のカード年間取引額及びカード利用率(試算)」によると、日本のカード年間取引額は2009年時点で4817億ドル(45兆円)。米国、中国、英国につぎ世界で4位の取引額となっている。

ここでいうカードには、クレジットカード、デビットカード、ディレイドデビットカード(決済日が数日遅れるもの)が含まれるが、米国や英国に比べ日本はクレジットカードの利用率が圧倒的に高い。逆に言えば、米国・英国ではデビットカードの利用率がとても高い。

これまで日本でデビットカードが大きく普及しなかった理由としては、ポイント還元率や安全面での不安が挙げられている。

クレジットカードで買い物をする際、楽しみなのはポイントの還元だ。しかしデビットカードではポイントのサービスがないケースが多い。お得感を味わえないという点が普及を妨げてきた一つの理由かもしれない。

電子マネーの台頭がデビットカード普及につながる?

最近は電子マネーが台頭している。楽天Edy、nanaco、WAONといったショッピング系、SuicaやPASMOなどの交通系に分類されるが、電子マネーとデビットカードの大きな違いは、電子マネーの多くが先払い方式だという点だ。デビットカードの場合はその都度、使った分だけ口座から引き落とされるが、電子マネーの場合は先にお金をチャージしておかなければ利用することができない。

この電子マネーの台頭に、日本でのデビットカード普及のカギがあるかもしれない。電子マネーが普及したことで、現金やクレジットカード以外の支払い方法が身近なものとなってきた。

ただ電子マネーは便利だが、種類が多く、提携店舗でしか使えないものもある。また残金の心配やチャージの手間がある。

その点、デビットカードなら加盟店も多くチャージも不要だ。またポイントは付かずとも、キャッシュバックをしてくれるデビットカードもある。

これまではカード会社が、ポイントが付くクレジットカードの宣伝広告に力を入れてきた。しかし世界の状況を見れば、デビットカードがほとんど使われていない日本を、開拓できる市場とみてもおかしくないはずだ。だから銀行各社が次々と発行したり、VisaのテレビCMが目につくようになったりしたのだろう。実際、国内の多くの銀行では最近になって力を入れてキャンペーンをして、顧客獲得に励んでいる。

長い間、日本ではあまり注目されてこなかったが、今はデビットカードが及前夜といえるかもしれない。消費者としては、賢くオトクな決済方法の一つとして、導入を検討したいところだ。(ZUU online 編集部)

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