(写真=PIXTA)
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中国人は何かにつけて、あからさまである。欲しいものは必ず手に入れる。その意欲を個人も組織も国家も隠そうとしていない。まず自らを飾り立てより強く見せ、優位なポジションから交渉に臨もうとする。また潤滑油として会食、賄賂など、利益供与をふんだんに使う。目的のため手段は選ばない。思想的背景がない分、実は中国人は非常にわかりやすい。ただ彼らの採用する手段、方法が常識とはかけ離れているだけである。

円卓を囲む中華式の会食では、座が盛り上がると、必ず価格にまつわる話に移行する。これは一族の集まりも、ビジネスも変わりない。あれがいくらだった、これをいくらで買った、などの情報交換に花が咲く。ここ1~2年は不動産市況の低迷で、話題に上る回数は減ったが、以前は不動産情報ばかりだった。「その物件は1平方メートル、何元?」というのはあいさつ替わりだった。そこでまず住宅ローン事情から見ていこう。

リーマンショック後、不動産市場のドタバタ

2009年、リーマンショック後の緊急財政出動4兆元の威力によって、中国の不動産市場は沸騰した。上海では、1平方メートル1万元のマンションが、1年で2万元と2倍に暴騰した。これで裏収入を欠く一般庶民たちにとって、住宅購入はまず不可能となった。これが社会不安と化してはまずい、ということで2010年以降、たて続けに市場抑制策が導入された。

はたから見ていて最も効果があったと思うのは、“自らの居住用でない2軒目の住宅の売却益に対する税金を2倍に引き上げる”という政策だった。この結果何が起こったか、というと離婚の激増である。夫妻それぞれの1軒目ということにして、増税分を免れるのである。それはまるでコメディーだった。沿海部のT市では、殺到する離婚希望者をさばききれず役所の機能がパンク、ついに午前、午後に分けて抽選制が導入された。当りくじを引かないと、離婚手続きができないのだ。カネのためにここまで大騒ぎをするとは、さすが中国人というしかない。

これらの政策は2014年以降、不動産不況の進行とともに順次廃止されていく。昨年からは政策を完全に転換し、真逆な刺激策へ変わった。T市では2015年9月1日より、新築物件の場合、現金10%住宅積立金20%(これで頭金30%と称す)、ローン70%でよいということになった。積立金が30%から20%にダウン、ローンも先行して20%分の短期ローンを組めばよい、とされた。さらに中古物件では一切の制限がなくなった。

住宅ローン 完済まで所有権が得られないため借りるのは簡単

実際の住宅ローン事情はどうなっているのだろうか。それは相当にアバウトという印象だ。ローンを組む際の所得証明がまず信用できない。一般の中国企業では財務担当に頼めば、実際の5倍でも、平気で偽造してくれる。銀行側も先刻ご承知だが、完済まで所有権を保持するため、給与などあまり意に介さずドーンと貸してくれる。

ローンは60歳の男子定年年齢まで組むことができる。30歳なら期間30年、40歳なら20年まで可能ということだ。大手銀行員に聞くと、利率はケースによって差異はあるが今は4、35%くらいが多いという。

T市の不動産市場は回復中といって間違いなさそうである。某日系工場の日本人社長は、最近、不動産購入がらみの給与証明申請が多くなってきた、と言う。念のため「本当の給与額で発行していますか?」と聞いたところ、「もちろんそうだ」という返事だった。日本では当たり前でも、中国ではこれだけで高い企業倫理を備えた会社となる。

銀行員も「住宅ローンの申請が増えて忙しい」と証言しており、ビジネス、商業用途を除くと、不動産バブル崩壊の危機は、次第に縮小しつつあるように見える。

小口の消費者金融は実態不透明

住宅ローンの対極、生活に密着した消費者金融はどうだろうか。日本とはまるで風景が違っている。街にサラ金の看板はないし、ティッシュ配りもしていない。“民間借貸”という消費者金融カテゴリーはあるが、専業店舗は少なく、あまりなじみ深い存在ではないようだ。この分野は日本ほうがはるかに“あからさま”である。たまにポスターやビラを見かけても、アピール度は投資を勧誘する「理財商品」のほうがはるかに強い。ただしネット検索をすると、消費者金融会社はたくさん出て来る。身分証貸し、申請1分、審査10分、当日可能。無担保融資50万元まで、などとある。中には大手保険会社の子会社もあった。

地縁、血縁のしっかりした中国人なら、緊急の入用は一族親戚、または友人に借りることがほとんどだ、と誰もが言う。ただし核家族化の進行で、それができない人も増えている。

また中国企業家は余資があれば、性癖として金融をやりたがる人が多い。先日ある大手繊維企業が、「○○小額貸款有限公司」という消費者金融子会社を設立したことがわかり驚いた。また余資で個人不良債権の肩代わりをしている企業家もいる。いろいろな意味で日本とは風土が違い“民間借貸”の実態はつかみにくい。

2015年9月1日、最高人民法院は「民間借貸案司法解釈」を施行し、貸借紛争解決の指針を示した。これもやはり小口金融の複雑な状況を表している。トラブルが多発しそれらの整理基準の開示を、最高裁自らがせまられた、ということに違いない。しかしこうしたトラブル続きも腐敗のまん延と同様、中国では常態に過ぎない。中国人はあまり負担には感じていないだろう。(高野悠介、現地在住の貿易コンサルタント)

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