(写真=The 21 online/西蔭浩子(大正大学表現文化学科教授))
(写真=The 21 online/西蔭浩子(大正大学表現文化学科教授))

「I get off」は「アゲドウフ」でいい!

日本人の多くは、「英語を読めるのに、聴き取れない」という悩みを抱えている。それは、ネイティブが自然なスピードで話すと、単語同士の音がつながったり、消えたりして、スペルとは違う音に聴こえるからだ。「この"音の乱れ"を種類ごとに整理し、方程式として理解すれば、リスニングの苦手意識は克服できる」と話す大正大学教授の西蔭浩子氏に、「聴き取りアレルギー」の原因と治療法をうかがった。

英語と日本語では音の成り立ちが違う

日本人が英語を聴き取れない大きな理由、それは英語の「音の乱れ」を理解していないからです。

たとえば、What time is it now?は、学校では「ファット・タイム・イズ・イット・ナウ」と1語ずつ読むはずです。ですがナチュラルスピードの英語で、このとおりに発音されることはまずありません。音が連結したり短くなったりして、実際に聴こえる音はまったく違ってくるのです。

「掘ったイモいじるな」と言えば通じる、という冗談がありますが、これは冗談ではなく、本当の話。Whatとtimeがつながって「掘ったイモ」に、isとitとnowがつながって「いじるな」と、それぞれ変化した結果なのです。それぞれの音が連結して、別の語のように聴こえるのです。

英語は話すときのリズム(拍)の取り方が、日本語とまったく異なります。日本人が「私はアメリカに行きます」と言うとき、それを音符にすると図Aのようになります。

英語

同じ長さの音符が並び、音の上下もほとんどありません。一方、英語を母語とする人が話すときは、図Bのようになります。二分音符、四分音符、八分音符などさまざまな長さの音符が並び、音の上がり下がりも大きくなります。

日本語のようにリズムが一定だと、音が消えたり連結したりすることはほとんどありません。一方、英語のように音の高低差が大きいと、高い音は強く長めに発音され、ストレス(アクセント)が生まれます。一方、アクセントのない低い音ははっきり発音されず、流れていってしまう。これが日本人には聴き取れないのです。

「聴こえたとおり」にカタカナで書き取ればいい

この「音の乱れ」を理解しない限り、何度英語を聴いても聴き取れないのは当然です。そこで私は、日本人が英語を聴き取る上で障害になる音声上の特徴を、以下に紹介する6つに分けました。

これらの法則を知り、注意して聴くことで、英語の聴き取り力は驚くほど向上するはずです。大人の学習のコツは、理屈を知って理解を早めること。そして、理屈がわかって聴き取れるようになると、英語を聴くことがどんどん楽しくなるはずです。

リスニングの練習の際には、スペルからいったん離れ、音を聴くことに集中しましょう。知らない音があったら、聴こえたとおりにカタカナで書き取ってしまってOKです。

たとえば「I get off」が「アゲドウフ」と聴こえたら、そのまま「アゲドウフ」と書けばいいのです。その後、スペルを確認すれば、音の変化をより理解できるはず。それに、法則を知っていれば、カタカナから元の音を再現することも可能になってきます。

まずは自分が「6つのウイルス」のうち、どの分野が苦手か、確認してみてください。