まとめ

株主との対話や投資魅力度の向上が企業に求められるなかで、リキャップCBは便利な財務手法だろう。ROEが改善する一方で自己資本比率が低下するため、自己資本比率が極めて高い企業であれば資本効率改善策の選択肢になろう。また、一般にCBは普通社債より金利負担が少なく済むので、設備投資など成長資金の調達手段としても有効だ。

一方、アベノミクスにより順調に上昇してきた日本株市場も、ここにきて世界情勢の影響を受け厳しい状況を迎えている。こうした中、リキャップCBに対して投資家が冷静に評価するよう変化したのであれば、今後ますます個別企業に対する目線は厳しくなるだろう。もし、手っ取り早くROEを改善するためにリキャップCBを利用すれば、市場で厳しい判断が下されるかもしれない。

過剰な内部留保を有効活用するのは好ましいが、ROE改善の王道はあくまで収益拡大であることは間違いない。“負債増加と分母減らし"による一時的なROE改善ではなく、将来的な企業価値の拡大・継続的なROE改善につながるか、きちんと検討する姿勢が企業も投資家も求められる。

井出真吾(いでしんご)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 チーフ株式ストラテジスト・年金総合リサーチセンター兼任

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