マイナス金利
(写真=PIXTA)

日銀が導入した「マイナス金利」とは何か?

日銀が2016年1月29日に実施した「マイナス金利」導入が、金融市場を混乱に陥れている。導入開始後から銀行株などが大きく売られ、今後銀行の業績悪化がうかがえる。

日銀は、これまで3年間にわたって「QQE(量的・質的金融緩和)」を実施してきた。年間80兆円の国債を買い上げ、さらにETF(上場投資信託)を年間3兆円、J-REIT(上場不動産投信)を年間900億円買い入れ、現金通貨と民間金融機関の日銀預け金の合計額(マネタリーベース)を増やして2%の物価上昇を目指してきた。

だが、これまでの日銀のQQEが狙い通りに効果を発揮しなかったこと、そして原油価格の暴落や中国株の下落といった外部要因が重なった結果、マイナス金利が導入される運びとなった。つまり、「QQE+マイナス金利」によって物価上昇を目指そうというわけだ。マイナス金利は、民間金融機関が日銀に預ける当座預金の一部のみに適用され、金融機関が金利を受け取るのではなく「手数料」として支払うシステムだ。金融機関は、これまで一定以上当座預金することで0.1%金利を得ていた。しかしマイナス金利導入により、手数料を支払うことになったため、当座預金を避けて新たな融資先を探さなくてはならなくなった。

マイナス金利は、すでにデンマーク、スウェーデン、スイスの各中央銀行やECB(欧州中央銀行)が2012年から15年にかけて導入済みだが、欧州ではマイナス金利導入後、銀行の貸出金利などが大幅に低下した。デンマークのように住宅ローン金利が急低下し、住宅ブームに火が付いた国は住宅市場が過熱状態だ。現在、住宅価格が大きく上昇し、今後ますます激化することが予想される。総じてユーロ圏では、前年比3%のペースで減少していた融資が小幅ながら上向いた。

長期国債もついに利回りゼロに、金利低下で何が起こる?

日銀のマイナス金利の導入で、最初に起きた現象は金利の低下である。

10年物の長期国債の金利は、マイナス金利導入当日には前日比マイナス0.124%と前日の半分以上も下落して年0.094%となった。2016年2月9日には長期金利の指標となる10年もの長期国債の利回りが瞬間的にマイナス0.01%を付けるなど大きく下落した。

今回のマイナス金利は、銀行が預けている日銀の当座預金すべてに適用されるわけではなく、オーバーナイトなど新たに預け入れる一部の資金のみに適用される。従って、銀行などの収益が一気にマイナスになることはないものの、金利の低下が大きなダメージになることは間違いない。ドイツ銀行は日本の主要5行で利息収入が1500億円以上減少すると予測している。

長期金利の低下は、様々な方面に影響をもたらす。年金基金の運用などもそのひとつだが、最も大きな影響は「住宅ローン」や「不動産投資ローン」における金利だ。実際に、マイナス金利導入直後から住宅ローン金利引き下げのニュースが流れた。いち早く動いたのは、住信SBIネット銀行やじぶん銀行といったネット銀行。続いて、三菱東京UFJ銀行などのメガバンクも2月の住宅ローン金利の引き下げを発表している。

日銀でマイナス金利が適用されるのは2016年2月16日以降と言われており、どちらにしても3月には本格的な金利低下が始まると見受けられる。預金金利の低下はすでに始まっており、住宅ローンや不動産投資ローンも固定、変動を問わず、本格的な引き下げになるだろう。

こうした金利低下が影響を与える問題は、株式市場で銀行株が軒並み下落していることからも分かるように、銀行が大きな影響を受ける可能性があるということだ。競争が厳しいため、預金金利がマイナスになることはないと予想されているが、その反動として住宅ローンや不動産投資ローンの金利が大きな影響を受けるのではないかと言われている。

銀行収益引き下げる住宅ローン、融資審査の厳格化か?

預金金利の引き下げにダメージを受ける個人は少ないはずだが、住宅ローン金利が下落することは個人にとっては朗報ではないか――そう考えるのは自然だが、残念ながらそう簡単にはいかない。銀行側から考えてみると、住宅ローン金利の低下は銀行の収益悪化を招くことになるからだ。

とりわけ、変動金利は預金など資金調達の金利が低くなるのはいいことだが、団体信用生命保険料などの経費を差し引けば、住宅ローン金利からの利益は少なく、ほとんど儲けはなくなると試算される。

仮に3000万円融資しても、年間で4万円前後しか利益にならないという試算もある。この利益率では、ひとつでも焦げ付きが出れば全体の利益が吹き飛んでしまう。従って、審査は厳格化せざるを得ない。場合によっては、貸し渋りと思われかねない動きが起こりかねない。特に、金利の低い変動金利ではなおさらだろう。

もっとも、現在すでに住宅ローンを返済している人にとっては、あまり大きな影響はないと考えていいだろう。固定金利は、その名の通り金利が下がっても上がっても、毎月の返済額に変化はないからだ。よって、今後予想される史上最低の固定金利を狙って、住宅ローンを組む人が増える可能性がある。

故に問題は変動金利で、銀行の審査は厳格化し、運よく借りられても将来的に金利が上がると、徐々にローンの金利が上がっていく可能性が高い。しかし、変動金利のローン返済額は5年に一度の見直し(5年ルール)で、しかも返済額は最大1.25倍以下の変動に抑えられる(1.25倍ルール)。この2つのルールで返済額の急増を避けられるといわれている。

マイナス金利政策の実施により、住宅ローンの金利次第で住宅の購入が増える可能性が示唆できる。今後の動きに注目が集まる。(提供: Vortex online

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