熟年離婚の割合が増えている。長年にわたって連れ添った配偶者から突如として離婚を切り出された場合、年金や生活費などがどうなるか考えざるを得ないだろう。

熟年離婚の割合は過去最多ペース

増える熟年離婚 ! 生活費・年金はどうなる ?
(画像=takasu / stock.adobe.com)

厚生労働省の「令和2年 人口動態統計 (2020年) 」によると、2020年に離婚した夫婦は19万3,253組だった。離婚件数は2002年に約29万組とピークを迎えたが、2003年以降は減少傾向が続いている。

近年は離婚件数が減少傾向にある中で、割合が増えているのが「熟年離婚」だ。厚生労働省の「令和4年度 離婚に関する統計 (2022年) 」の概況によると、2020年の離婚件数のうち、同居期間が「20年以上」だった夫婦は21.5%を占めた。このことからも、長年連れ添った夫や妻から離婚を切り出されることは年々増えていることが窺える。

なお同居期間20年以上の夫婦の離婚割合は1950年に統計を取り始めてから最も高く、上昇傾向が続いている。これとは対照的に、割合が減少傾向にあるのが同居期間「5年未満」の夫婦の離婚だ。

2020年の婚姻件数は52万5,507組で、 (離婚件数) ÷ (婚姻件数) を計算すると、0.368になる。日本ではよく「夫婦の3組に1組が離婚している」などといわれるが、それは、こういった数字が根拠となっているからだ。

離婚前の別居中の生活費はどうなる ?

熟年離婚の割合が高くなっていることを踏まえると、自分が熟年離婚と無縁でいられる保証はない。離婚を余儀なくされる場合を想定し、離婚をめぐるお金の事情を知っておいて損はないだろう。

まず、確認しておきたいのが、離婚が成立する前に配偶者と別居した場合の生活費だ。夫婦が通常の社会生活を営むのに必要な食費、居住費、医療費、子どもの教育費といった諸々の費用を「婚姻費用」という。

婚姻費用は、資産や収入などに応じて夫婦で分担すべきものとされており、別居中であっても婚姻関係が続いている限りは支払い義務が生じる。別居する際に婚姻費用について夫婦間で話し合い、それぞれの負担額に関して双方が合意していれば問題はないが、話し合いがまとまらないケースは少なくない。

話し合いがまとまらず、いずれかが家庭裁判所に調停の申立てをすると、調停手続きが始まる。調停においても合意に至らず手続きが不成立に終われば、次は審判手続きに移行する。審判手続きでは、裁判官が婚姻費用の負担額を決めることになり、従わないと最終的には強制執行で給料などを差し押さえられる。

財産分与について

熟年離婚する場合は、財産分与も避けて通れないだろう。財産分与とは、婚姻期間中に形成した共有財産を清算することで、原則として共有財産は2分の1ずつ分けられる。婚姻期間中に形成された財産であれば、基本的には財産の名義人にかかわらず、共有財産とみなされる。

土地・建物といった不動産をはじめ、自動車や株式などの有価証券も共有財産になり得る。夫婦のいずれかが専業主婦 (夫) の場合でも、家事労働で財産の形成に貢献したと考えられ、原則は2分の1の財産分与を受けられる。

ただし、結婚前にためていた預金や、親から相続した遺産などは共有財産ではなく「特有財産」とみなされ、財産分与の対象にはならない。

慰謝料について

熟年離婚では、いずれかが慰謝料を支払うことも想定される。慰謝料は離婚に際して、一方が他方に与えた精神的苦痛に対して支払われる賠償金で、慰謝料が発生するのは不貞行為 (浮気・不倫) だけではない。

例えば、DV (ドメスティックバイオレンス) やモラハラ (モラルハラスメント) も離婚原因となりえ、慰謝料請求の対象になる。

慰謝料と財産分与は本来、別々に算定されるものだが、財産分与と慰謝料をあわせて話し合うこともある。例えば、夫の不貞行為が原因で離婚し、夫が妻に慰謝料を支払う場合、本来は2分の1ずつ共有財産を分割するところを、慰謝料分だけ妻の取り分を多くし、2つをあわせて清算するといった具合だ。

年金分割について

離婚の際は年金も分割される。年金分割は、婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割する制度で、「合意分割」と「3号分割」の2パターンがある。

合意分割は、夫婦間で話し合って保険料納付記録の分割割合を決める方法で、通常は2分の1ずつ分ける。話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所への申立ても可能だ。

3号分割は、国民年金の第3号被保険者だった者からの請求により、相手側の厚生年金の保険料納付記録を2分の1ずつ分割する方法だ。第3号被保険者とは、厚生年金保険の被保険者の被扶養配偶者を指し、専業主婦 (夫) などが含まれる。

共有財産は原則2分の1ずつ分割

全体として離婚件数は減少傾向にあるものの、数字に占める熟年離婚の割合が高くなっているのは事実だ。

熟年離婚に限らないが、離婚の際は婚姻中に形成した資産から年金に至るまで、共有財産は原則として2分の1ずつ分割される。積極的に考えたい話題ではないかもしれないが、長年連れ添ったパートナーとの熟年離婚になれば経済的な影響は比較的大きくなることが見込まれるだけに、基本的な知識・事情については知っておいて損はないだろう。

(提供:大和ネクスト銀行


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