決算シミュレーション
(写真=PIXTA)

「法人保険は節税効果が大きく、決算対策に有効である」保険会社や金融機関はそのような切り口から、企業に対して法人保険を積極的に推進しています。実際に多くの企業が法人保険に加入していて、保険料の半額を損金計上できるもの、なかには全額を損金計上できるものもあります。

これらの保険は節税効果が大きいことは事実です。しかし、契約したきりでそのままになっている保険は無いでしょうか。節税効果をフルに活かすには、解約までのシナリオをきっちりと描くことが必要です。それには年度初めの決算シミュレーションが欠かせません。

そもそもなぜ法人保険に入ったのか

法人税の節税には、経費(損金)を増やして利益を圧縮する方法が一般的です。社員旅行や、備品の購入、社用車の購入などさまざまな方法がありますが、とりわけ効果が高いのが法人保険です。

1000万円の利益が出る会社であれば、全額損金計上できる保険を1000万円加入することで、利益は0になります。それだけ法人税を節税できるというわけです。節税効果が高く、しかも手っ取り早いという点では法人保険は決算対策には欠かせないといえるでしょう。

法人保険の魅力はそれだけではありません。法人保険を解約すれば、解約返戻金を受け取ることができます。保険商品により返戻率は異なりますが、法人保険は帳簿外に資金を貯めておく効果も期待できるのです。会社の経営は、今は順調でもいつ天災や事故など不慮の事態が発生するか分かりません。そうした時のために、帳簿外に予備資金を貯めておけるのも法人保険の大きなメリットといえます。

当然ながら法人保険には保障があります。経営者は「自分に何かあったときに会社は大丈夫だろうか」という不安を抱えています。経営者が突然いなくなれば、社内が混乱し銀行や取引先に対する信用が損なわれ、経営に影響が及ぶ可能性があります。社員への給与が十分に支払われない可能性もあるでしょう。そんな時に、死亡保険金を受け取ることができれば、経営の立て直しをはかることもできます。保険に入ることによって、万が一のリスクに備えることが可能となるのです。

より現実的な話としては、法人保険の解約返戻金を経営者や従業員の退職金に充てるという使い道があります。法人保険であれば、節税すると同時に保障を受けながら退職金を貯めることができるので、銀行預金で退職金を積み立てるよりもはるかにメリットは大きくなります。

出口が重要な法人保険

しかし、法人保険にもデメリットがあります。当然保険料を支払い続ける必要があり、その分会社の利益から保険料がキャッシュアウトされることになります。会社が成長するためには、人材や設備に対する投資が不可欠です。節税を重視するあまり、必要な投資が疎かになってしまってはいずれ経営に悪影響が及ぶ可能性があります。

法人保険は、解約したときに解約返戻金を受け取ることができることは既に触れましたが、解約のタイミングによって返戻率が大きく違うことにも注意が必要です。商品によって返戻率のピークは異なりますが、ピークを過ぎると一気に返戻率が下がります。どれほど節税効果があっても、実質的に返戻率がマイナスでは法人保険の意味がなくなってしまいます。

そして、法人保険は法人税を「繰り延べ」していることを忘れてはなりません。支払った保険料は損金として計上できても、法人保険を解約した時に受け取る解約返戻金は受け取った時点で雑収入になります。今まで損金として計上していた金額が、そのまま益金となり法人税が課されます。つまり、法人保険の解約は役員の退職金支払いや大きな設備投資などに合わせなければ、結局のところ節税効果がないのです。

法人保険を活かすためには決算シミュレーションが不可欠

これから法人保険に加入しようという企業にとって、決算シミュレーションは重要です。貯蓄性の高い保険を選ぶのか、それとも節税効果を重視した保険を選ぶのか。そして、どれだけの保険料を払い続けるのか。これらを決定するために決算シミュレーションは欠かせません。

また、既に法人保険に加入している企業も定期的にその内容を見直す必要があります。複数の保険契約があれば、それぞれの保険の解約返戻ピークをうまく管理しなくてはなりません。年度初めに決算シミュレーションを行えば、法人保険を有効に活用できる機会も増えるはずです。そして、法人保険をうまく活用すれば、企業収益を改善し安定化することが可能となるでしょう。(提供: TRUSTAX

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