◆勤労奨励金の給付体系や支給状況

韓国における勤労奨励制度の給付体系の最も大きな特徴としては、勤労所得の水準により給付額が逓増区間(phase-inrange)、定額区間(flatrange)、逓減区間(phase-outrange)という三つの区間に区分されることである。

逓増区間(phase-inrange)は、勤労所得が増加することにより勤労奨励金が定率で増加する区間、定額区間(flatrange)は勤労所得の増加と関係なく最大給付額が支給される区間、逓減区間(phase-outrange)は、勤労所得が増加することにより勤労奨励金が定率で減少する区間である。

例えば、単身世帯(配偶者扶養するや子どもがいない60歳高齢者一人世帯)の場合、年間総給与額等が600万ウォンまでが逓増区間であり、働けば働くほど総所得が増加する。また、年間総給与額等が600~900万ウォンの場合は70万ウォンが定額支給される。

最後に年間総給与額等が900万~1,300万ウォンの場合は年間総給与額等が増加すれば増加するほど勤労奨励額が減額される(図表11)。世帯種類別勤労奨励金の計算方法は図表12の通りである。

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2015年度からは申請者に扶養する子どもがいる場合に、子ども一人当たり年間最大50万ウォンが支給される子ども奨励金が新しく導入された。

勤労奨励金の支給実績を見ると、勤労奨励金の支給世帯は2010年の52.2万世帯から2013年には84.6万世帯まで増加した。また、支給金額も同期間に4,020億ウォンから7,745億ウォンまで増加しており、制度が少しずつ定着しているように見える(図表13)。

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◆勤労奨励金や子ども奨励金が自営業者にも拡大・適用

2015年からは勤労奨励金や子ども奨励金が労働者のみならず自営業者にも拡大・適用されることになった。但し、弁護士、弁理士、公認会計士、医師、薬師等の専門職や事業者登録をしていない事業者は除外される。自営業者が勤労奨励金や子ども奨励金の給付を頂くためには、労働者と同一の申請基準を満たさなければならない。また、次の手続きを事前に行う必要がある。

事業者登録:毎年12月31日まで。
付加価値税の確定申告:毎年1月26日まで。
事業者現況の申告:免税事業者の場合は事業者現況を申告する必要がある。毎年2月10日まで。
総合所得税の申告:毎年6月1日まで

自営業者への勤労奨励金や子ども奨励金の総給付額は、労働者世帯と同じく「夫婦合算総給与額等」を基準に支給される。但し、雇用者に比べて自営業者の所得捕捉が難しいことを考慮し、自営業者の総給与額等は業種別調整率を適用して計算する。

図表14は業種別調整率を示しており、業種によって調整率が異なることが分かる。つまり、調整率が高い業種ほど所得捕捉率が低いので、調整率が高く設定されている。例えば、食堂を経営しているAさんの年間総収入が3,000万ウォンで、配偶者が職場で1年間1,000万ウォンの給与を頂いた場合のAさん世帯の総給与額等は、2.350万ウォンになる(式1))。

式1)Aさん世帯の総給与額等 =(3,000万ウォン(Aさんの年間総収入)× 0.45(飲食店の調整率))+1,000万ウォン(配偶者給与総額)=2,350万ウォン

これは、図表9の総所得基準条件(共働き世帯)を満たしているので、式2の計算により、勤労奨励金として1,916,250ウォンが支給される。

式2)210万ウォン-((2,350万ウォン(総給与額等)-1,300万ウォン)×(210/1,200))=1,916,250ウォン

しかしながら、年間総収入と配偶者の給与がAさんと同じである不動産賃貸業をしているBさん世帯の場合は、調整率が高く、総給与額が上がり、図表9の総所得基準条件(共働き世帯)を満たしていないので、勤労奨励金が支給されない(式3))。

式3)Bさん世帯の総給与額等 =Bさん世帯の(3,000万ウォン(Bさんの年間総収入)× 0.9(不動産賃貸業の調整率))+1,000万ウォン(配偶者給与総額)=3,750万ウォン

図表15は、自営業者世帯が事業所得のみである場合に勤労奨励金や子ども奨励金が申請できる年間総収入金額の上限額を示している。

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