マーケット・カルテ,円安ドル高
(写真=PIXTA)

3月中旬、米FOMCにおいて今後の利上げに慎重な姿勢が示されたことで、円高ドル安が進行した。また、日銀の追加緩和観測は存続しているものの、マイナス金利導入後に円安がもたらされなかったことなどから、市場における「日銀追加緩和=円安」という連想が弱まっており、ドル安圧力に抗えなかった面もある。

こうした中、今後の最大の焦点は「6月の米利上げ」となる。3月FOMCを経て、市場の利上げ観測は後退したが、今後堅調な米景気を背景に次回議長会見のある6月の利上げが織り込まれていくことで、ドル高圧力が生まれるだろう。

日銀の追加緩和も多少は円安に働くと考えられ、今後3ヵ月の方向性は円安ドル高と予想する。ただし、米利上げは同時に人民元安や原油安を誘発し、リスク回避の円買いを再び活発化させる懸念もあるだけに、ドル円の上値はかなり限定されそうだ。一方で、もし「6月利上げは困難」との見方が市場で広がれば、ドル円レートは110円を維持できなくなるだろう。

ユーロ円では、今月に入ってECBのマイナス金利打ち止め観測の拡大からユーロの買い戻しが入り、円安ユーロ高方向への水準調整が起きた。日銀とユーロ圏の景気や金融政策には大差がなく、今後3ヵ月間もユーロ円の方向感は出にくそうだ。

今後、日銀の早期追加緩和観測が多少円安に働くとしても、6月下旬に国民投票を控えた英国のEU離脱への警戒がポンドとともにユーロの売り圧力を高めるため、相殺されてしまうだろう。

長期金利は、0.0%~-0.1%付近で方向感を欠く展開が続いている。今後も下限を試しに行く動きが想定されるが、(債券価格の)高値警戒感や米長期金利の持ち直しもあって、一方的にマイナス幅を広げていく展開にはならないと見ている。(執筆時点:2016/3/22)

上野剛志
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 シニアエコノミスト

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