自動運転,グーグル
(写真=Thinkstock/Getty Images)

次世代の中核的な自動車技術の一つとみられる「自動運転」。その実現に向けて自動車分野で存在感を高めてきているのが、大手IT企業だ。背景にあるのは自動車のIT化、ソフトウェア化で、今では自動車産業の奥深くに向けてIT企業が浸透しつつあるとみられる。

自動車へのITの浸透の帰結の一つが自動運転技術で、その研究自体はずいぶん前から行われていた。最近ではさらに、社会的な関心も急速に高まっており、ニュースで耳にすることも増えた。加えて、自動運転の実現に向けてベンチャー企業がシステム開発に取り組むだけではなく、官民が協力して自動運転自動車の実用化を目指して実証実験を推進している。そんな現状だ。

ただし、自動運転車実現への動きを牽引しているのは、自動車メーカーだけではない。大手IT企業も開発競争に加わっているのだ。特に、Googleは2009年から他社に先行して開発に取り組んできており、開発競争で独走体制に入っていると一部では言われている。実際に、Googleはすでにかなりの累積距離に達するまで、走行実験を繰り返している。

自動車分野に雪崩れ込むIT大手

もちろん自動車分野に取り組むIT企業はGoogleだけではなく、従来は自動車のイメージとまったく結びつかなかった企業も開発を進める。例えば、スマートフォン「iPhone」を世に出したAppleだ。同社は「タイタン」という自運転動車の開発プロジェクトを進めており、2019年に車のデザインを完成させ、2020年には一般発売するとみられている。

ちょうど東京オリンピックの年に、Apple製の自動運転車が一般に走行を開始するという見通しということだ。

さらに、自動運転技術には、IT企業に有利に働く側面もある。自動運転車の場合には、AI(人工知能)技術や関連インフラの方が自動車の性能や製造そのものよりも重要になるとみられており、自動車メーカーの地位が相対的に低下するかもしれないからだ。

極端に言えば、自動運転車が普及すると、自動車メーカーはIT技術力の高いIT企業の下請けになってしまうかもしれないのだ。

その点で、自動車メーカーの競争相手はもはや、従来の同業他社ではなく、大手IT企業になるかもしれない。最近の自動車業界には、大きな危機感が渦巻いている。

カギを握る「車載OSの覇権」

キーとなるのは車載OS(基本ソフト)を巡る競争の行方だ。自動車のシステムの基本ソフトについては、Googleが「Android Auto」の開発を、Appleが「CarPlay」の開発それぞれ推進。将来的に、車載OSのスタンダードを自社のソフトにできれば、多大な利益を得られるともみられる上に、ともすれば、「Android Auto」や「CarPlay」を搭載していない自動運転車は市場から淘汰される可能性もある。

そのため、車載OSを巡る覇権の行方が注目を集めている。

実際、自動車メーカーや車載電子機器メーカーも、さまざまな車載OSへの対応を推進しており、市場が立ち上がりつつあると見てもよいだろう。「CES 2016」では、フォードがマイクロソフトと共同で開発している車載システムで音楽を再生する機能を発表したり、ドイツのフォルクスワーゲンやアウディが、Appleの車載OS「CarPlay」を使ったデモを発表するなど、自動車とITの双方の取り組みが進んでいるからだ。

標準的OSの覇権を巡る競争は、マイクロソフトが成功してきた軌跡を彷彿とさせる。マイクロソフトはかつて、パソコンのOSの覇権を握ることで、IBMからコンピューター部門トップの座を奪ったが、同様のことが自動車でも起きかねないからだ。その点で、GoogleとAppleが自動車分野でも急成長して、業界を乗っ取るという可能性はゼロとは言えなくなってきている。

実際、すでにスマートフォンOSがGoogleとAppleの独壇場になっている現状を考えれば、スマホ連携という点からもこの2社が主導権を握っていく可能性は限りなく高いのだ。「iPhone」のOSである「iOS」とGoogleのスマホ向けOSである「Android」がスマホOSで2強になり、携帯端末メーカーがその後に辿った末路を見れば、まったくの戯言だとも言い切れないだろう。

「iPhone」のような自動車が走る未来は来るか?

ほかにも、IT企業の自動車分野に参入で大きく変わるとみられる事がある。それが製造方式だ。というのも、GoogleやAppleは、既存の自動車メーカーのように車を自社生産するのではなく、製造パートナーを見つけてOEM生産をしていくと見られている。Appleが「iPhone」を台湾のフォックスコンなどにOEM生産させたようなスタイルだ。

もしこの製造方式が実現すれば、自動車メーカーにとっては大きな脅威となるとみられる。つまり、「OSやAIといったITでの技術力はあっても車の性能開発や製造ノウハウでは太刀打ちできないだろう」と高を括ってはいられないのだ。

実際、自前工場を持たない方針のGoogleは、自動運転車製造・販売に向け、米国や日本など複数の企業と提携に向けた話し合いを進めていると言われている。その一つに米フォードの名前があがっている。

出遅れた日系各社も追撃態勢に

自動運転のシステムはハードメーカー(自動車メーカー)のこれまでの長年にわたる技術結集だけでは実現しないため、Googleなどに比べてIT分野が弱い自動車メーカーはすでに後れを取っているのが現状だ。

ただし、日本の自動車メーカーもこの劣勢状況を、指をくわえて眺めているわけではない。トヨタ <7203> や日産 <7201> 、ホンダ <7267> などの大手6社は自動運転技術に関する8分野で共同研究を進め、Googleなど欧米企業に対抗する。デンソーやパナソニックなどの部品や電機大手も参加し、官民連携も深めて「オールニッポン」で競争力を高めていく狙いだ。

また、トヨタは独自にマサチューセッツ工科大学など米有数の大学と提携し、人工知能の研究開発を進めていく方針という。自動運転技術は社会インフラとの関連が欠かせない。自動車メーカーの独自技術だけが確立していっても、日本市場だけ孤立したような、かつての「携帯電話のガラパゴス化」の二の舞になる恐れもある。

自動運転技術は、大手自動車メーカーだけではなく、部品のサプライヤーや政府も含めて巨大な分野で、その覇権を握る企業がどこかで今後の産業構造も大きく変わっていくだろう。トヨタやフォルクスワーゲンも油断していると、GoogleやAppleに取って代わられる日が来るかもしれない。(ZUU online 編集部)

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