DINKSは「貯蓄が少ない」と聞くことが多い。それは共働き故の貯蓄意識の低さを揶揄する場面も多いが、あながち間違ってはいないのではと思う。貯蓄は、何かがあった時の生活保証という色合いの強い預貯金とすれば、確かに共働きであり、健康保険などの公的保証や最低限の民間保険の保障に入っていれば「問題ない」と考えている当人たちも多い。
DINKSに貯蓄は必要ない?
それではDINKSは本当に貯蓄が必要ないのだろうか。このことを考える前にまず、「収入」と「貯蓄」の違いを考えてみたい。貯蓄は現金や証券などによって、日々の生活では手をつけない資産のことだ。貯蓄と一言でいっても、毎月の生活費が不足すると引き出す流動性の高い貯蓄と、万が一に備えた流動性の低い貯蓄がある。
一方で「収入」について。収入は毎月安定して受け取る、いわば「月次で定期的な外部からの資金調達」を指す。ある程度安定して定額が見込める一般的な会社員像での収入と、フルコミッション(成績反映の給与モデル)や自営業の場合がある。
かくいう筆者も自営業で、妻が勤め人という正反対の収入モデル。筆者は収入の安定性はないが上がるときは青天井で上昇する一方、妻は所属する組織での給与ルールにもとづいて、就業年数などに応じて給与金額が決まってくる。DINKSにとっての収入と貯蓄、どこには子育て中の夫婦とは違う独自の特色がある。
DINKSは「収入」が「貯蓄」を兼ねる
貯蓄型生命保険のパンフレットを見ていると、収入にもしものことがあった際に、という言葉を見かける。一般的な貯蓄の印象は子どもの教育費に、夫婦の老後資金に、という意味合いが強いが、収入がなくなったときに生活費の補填としての役割も貯蓄は持つ。DINKSに関してはこの部分が異なり、片方の収入が途切れると、もう片方の収入は「貯蓄」を兼ねる、といえるだろう。
筆者も昨年、独立当初は貯蓄と妻の収入により、独立当初の収入の一時的な落ち込みをカバーすることができた。病気やケガに対する保証のほかに、「キャリアチェンジ」への対応力もあるのがDINKS家計の特色のひとつだ。
DINKSだからこそ「財布は一緒」を勧めたい
DINKS夫婦の「収入」と「貯蓄」の連動性を強める方法として、筆者は「財布を一緒にすること」を勧めたい。FP(ファイナンシャルプランナー)として仕事をしていると、夫婦によりさまざまな「お金のカタチ」があることを感じる。こと収入の取扱いに限ってみても、以下のようなケースがあった。
(1)夫婦の財布は別々。家賃、水道光熱費、食費とした生活費は、どちらかの財布から支出をするか、「折半」をする。収入額についてはお互いに給与明細を渡している。
(2)夫婦それぞれの銀行口座(独身時代から使用していたものなど)のほかに、生活費ほか諸費用を支払う夫婦共通の口座を作り、不足した場合はお互いに負担割合を決めて入金する。
(3)夫婦それぞれの銀行口座を持つ。生活費は種目別にどちらかの財布から出す。お互いに経済的な不干渉を徹底しており、お互いの収入額を知らない。
夫婦の金銭的価値観により、居心地の良いそれぞれのカタチがあるだろう。筆者はいまや少数派ではあるが、夫婦で財布は一緒にする方法を勧めたい。いわゆる「小遣い制」というものだ。それは先ほどの「収入」と「貯蓄」の距離感に深く関係する。
DINKSは共働きといっても、お互いの収入が今後変わらず安定するとは限らない。その場合に貯蓄面のある相手の収入を見ることによって、万が一の際に頼ることのできる度合いを見ることができる。合わせて自身の収入を開放して伝えることによって、今後の収入の見通しを共有することができるだろう。
向き合いたい、お互いの「キャリア」
収入見通しの共有が繋げるのは、お互いの「キャリア」への理解ではないだろうか。いま現在の仕事環境などは話すことも多いとは思うが、なかなか5年や10年といった数年後の立ち位置や働き方などを共有する機会は、夫婦のあいだでもそうあるものではない。
収入から相手の勤務状況、負担状況などをリサーチすることによって、これからどのように考えているのか、話し合う土台にもなると考える。2016年4月1日からキャリアコンサルタントが国家資格になったように、キャリアの多様化はひとりでは判断できないことも多い。そのときに、最も近くで見てきた存在からのアドバイスは、とても重宝するものだろう。「収入」と「貯蓄」の関係から、発展させていきたいところだ。
工藤 崇 FP事務所MYS(マイス)代表
1982年北海道生まれ。北海学園大学法学部卒業後上京し、資格試験予備校、不動産会社、建築会社を経てFP事務所MYS(マイス)設立、代表に就任。雑誌寄稿、WEBコラムを中心とした執筆活動、個人コンサルを幅広く手掛ける。ファイナンシャルプランナー(AFP)。
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