アベノリスク,アベノミクス,証券
(写真=PIXTA)

証券会社の営業担当者が外貨資産や不動産への投資を提案することが増えている。どうやらそこにはアベノミクス失敗に備える狙いがあるようだ。

日本の未来に待ち受ける3つのシナリオ

安倍政権発足当時1万円を切っていた日経平均株価が一本調子で上昇し始めたのは3~4年前の話だ。その後、2015年5月には2万円を突破し6月に18年ぶりの高値をつけたものの、世界経済の不透明感などを背景に7月からは下落。マイナス金利導入などカンフル剤が打たれたが、いまだ下落基調に歯止めはかかっていない。ここから先に待つシナリオは3つありそうだ。

シナリオ(1) 時間はかかったがアベノミクス成功

円高が落ち着いて円安に反転し、大企業を中心に好調な業績を取り戻す。大企業製造業を中心とした設備投資も増える。これらの堅調な業績や設備投資を背景に、企業は政府の求めに応じて賃上げをする。賃上げに伴い、消費者の消費行動もおう盛になり、買われることで自然と物価が上昇し、お金が循環する。その後、タイミングを見計らって、マイナス金利を伴う質的量的金融緩和を終わらせる――政府が描く現時点でのベストシナリオはこれだ。

このような円安と好景気が訪れた時は、「モノの値段が上がるので、資産は海外の株や不動産にしておくと為替と値上がりの利益が取れます」と営業担当者は言うだろう。

だが、現状円はなかなか安くならず、企業の想定為替レートを下回り、見直しを余儀なくされている。政府が人為的に起こしているインフレはコスト・プッシュ・インフレと呼ばれ、物価上昇を下支えする前向きな要因は見つからない。もしこれが自然な好循環に入れば、アベノミクスは成功と言える。

シナリオ(2) アベノミクス失敗、デフレに逆戻り

円高基調は収まらず、輸出企業は安倍政権発足前と同様、苦しい状況になる。一方、円高になったことで為替の影響で価格が上がっていたものは価格が下がる可能性がある。物価が下がっても、消費者が安いからたくさん買おうとならなければ、企業の収益は伸び悩み、結果として賃上げも遠のく。現在も日本が苦労しているように、負の螺旋階段を降りていくようなデフレからの脱却は相当難しい。

このような円高と不景気が訪れた時は、「もの」の値段は下がっているので、過去を振り返っても株や不動産は軒並み奮わない。一方で、お金は円高で価値が上がっているので、資産を現金・預貯金、もしくは円建ての債券で持つことが資産を減らさないための対策となる。もちろん営業マンがそれを勧めるかは別の話だ。

シナリオ(3) アベノミクスがアベノリスクになる

3つ目のシナリオは前述2つのシナリオの“良くない”部分だけが残った「スタグフレーション」という状態だ。

そもそもスタグフレーションとは、「物価だけが上昇し、景気は良くならずに賃金が上がらない」というものだ。日本では過去3度(昭和初期、オイルショック時、サブプライムローン問題発生時)起こったとされている。

アベノミクスの指標に掲げている物価上昇率については、2013年の+0.36%に始まり、緩やかながら上昇基調をたどっている。食料品についても、赤城乳業の「ガリガリ君」をはじめ、何十年ぶりの値上げが相次いだ。全体として日銀のインフレ目標には届いていないものの、多くの人が実感するくらいには、物価は上昇している。

およそ1年半前、ノーべル経済学賞受賞者で米国の経済学者のポール・クルーグマン氏も、「日本はスタグフレーションに陥りつつある」とニューヨーク・タイムズ紙に寄せたコラムの中で述べている。

前回、サブプライムローン問題が起こった時のスタグフレーションを参考に、どの資産が堅調だったか見てみよう。

国内株式市場は停滞し、国内債券金利も低水準で推移した。為替も円高となったことで、相対的に金利が高く、円高リスクを回避できる外貨建資産に投資をするほうがパフォーマンスは良好だった。また、不動産投資信託も、経済成長に伴う不動産需要の拡大期待から、外国の不動産投資信託の人気が高かったのである。

証券会社の営業担当者が外貨建て資産や外国の不動産を勧めるのも、まさに日本がスタグフレーションのさなかにあるからと言えないだろうか。(ZUU online編集部)

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