4月に入り、新入社員と思われるビジネスパーソンをよく見かけるようになった。
日本の人事制度では「○○畑」という入社当初時に配属された部署の流れが、その後のキャリアの基盤となっていく事が多い。
国際派をめざす新人・若手は、最初の配属先をいかに良い部署とするか新入社員研修の段階での努力が大変重要となると共に、すでに配属先が決まっている場合でも今後の異動、もしくはその部署での評価を上げるために金融リテラシーを身につける必要がある。
金融リテラシーとは狭義の金融の話だけではなく、コストや会計の話も含む。今回は現代の働き方にどの様な金融リテラシーが必要なのかを考える。
同一賃金同一労働、コスト意識
現在、保守リベラル共に推進しようとしているのが同一賃金同一労働の考え方だ。これは従来の漠然とした「仕事」をしっかりと労働タスクに分け、その労働タスク一つひとつに賃金を設定する事で、賃金制度の明示化を進めたいという考え方だ。
この考え方はすでに外資系では当たり前だが、日本企業においては抵抗感、もしくは理解の浸透がなされていない状況だ。月ぎめではなく業務内容での賃金払いとなるため、業務の効率化を行うことができる。現在の日本の勤務体制については、残業時間が極めて多い割には成果、付加価値の創出度合いが低く、低効率な働き方を行っているといわれている。
これからの働き方では、より効率的な働き方が求められることとなり、また効率的に働くことができれば、担当するタスクも増える好循環となる事となる。
その為に、自身の月収を時給換算したうえで、仕事あたりのコストを計算する事が重要だ。そして、様々なツールや技術を利用して一つひとつのタスク、仕事に必要な時間を減らし、自分の手が空いている時間を作り出す必要がある。
会計についての最低限の知識
このコスト意識を持つためには会計についての最低限の知識は必要だ。簿記の3級と2級程度の知識は得ていることが望ましい。
3級は単体の財務諸表を読み、作る知識となる。自社の財務諸表や取引先の財務諸表を読み解くのに必要な知識となる。
また2級についてはより踏み込んだ単体の財務諸表と管理会計の知識を得ることが出来る。2級程度の簿記の知識を得ることで、有価証券報告書についても読みこなすことがある程度できる。
財務諸表だけでなく様々な注記事項、これからその会社がどの様な方向性の戦略を立てているかを知ることが出来るようになる。管理会計の知識については、まさしく上記のコスト意識についてだ。
自分だけでなく、自分の業務が他部署に対してどの程度コストをかけているのか、またそのうえでどの程度の収益をあげているかを見ることで、自身のコストパフォーマンスを意識できる様になる。
今という時代を理解するために主要な金融指標を理解
ビジネスにおいて「今」という時代を理解している事は極めて重要で、その指標は金融指標だ。
例えば日本経済であれば日経平均となる。もっとも銀行・証券に勤めていもない限りは日経平均を1円単位で日々確認する必要はない。
おおよそ1000円単位で現在いくら程度なのか、また日々いくら程度変動しているのかについては把握する必要があるであろう。
わずか数年前には1万円を切り8000円近かった日経平均は昨年には2万円となり、現在は1万6000円付近だ。先行性があり、将来の経済を表しているといわれている日経平均がここ数年間で倍近くなっているのである。これはビジネス上の前提も大きく揺るがす変動だ。
常に日経平均のおおよその数字は理解しておかなくてはならない。国際派を目指すのであれば日経平均だけでなく、為替や米国のダウ平均についても把握すべきだろう。
それらを把握するためにも毎日、新聞を読むべきだ。可能であれば日本経済新聞を読むことが望ましい。なぜその指標が動いたのかをしっかりと理解をしていかないといけない。
国際派をめざす新人、若手が身につけておくべき感覚としては、何よりもコスト意識だ。自分が会社にいる時間は会社にとってのコストである。この事実をしっかりと認識をしていないといけない。
国際派となれるか否か、将来希望の部署に配属されるか否かは最初の評価で大きく変わる。入ってすぐの今、ダッシュで成長できるように、最低限の金融リテラシー知識は身に付けてほしい。
岸泰裕、元外資系金融機関勤務・大学非常勤講師
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