全く関係のなさそうなものに意外な効果が発見されるケースがある。たとえば、カニやエビの甲羅から作られるキチンという物質は、火傷などを早くきれいに治す創傷被覆剤として商品化されている。一時期、兜町界隈でも話題になったことがある。
これと似たような話がこのほど、東京株式市場に伝えられた。なんと、カルシウムが頭髪成長に効果があるというのだ。江崎グリコ <2206> が、初期むし歯対策に効果があると販売しているガム「POs-Ca(ポスカ)」の素材から、通常のカルシウムに比べ、頭髪を成長させる毛乳頭細胞の増殖促進効果があることを発見したのだ。同ガムはむし歯の再結晶化に効果があるとして日本歯科医師会推薦のお墨付きをもらっている優れものだが、主な素材はリン酸化オリゴ糖カルシウムで、原料は北海道産ジャガイモである。つまり、ジャガイモに含まれるカルシウムに頭髪を成長させる効果があるということになる。
江崎グリコでは、スカルプケア市場に活用できるとして「一部の化粧品メーカーに、すでにサンプル出荷を始めた。2016年度中にも、化粧品メーカーのスカルプケア関連の新製品への採用を目指す」と伝えている。
近年注目を集める「スカルプケア」
もともとは、雨上がり決死隊やブラジルのサッカー選手・ネイマールが出演するテレビCMなどで知られるようになった「スカルプケア」。スカルプとは英語で「頭皮」を意味する。つまり、スカルプケアは「頭皮のケア」ということになる。
人間の頭髪は平均10万本前後とされるが、1日に平均50~100本程度が自然に抜け落ちるとされている。毛髪が生えている頭皮が、人間の身体の中で最も新陳代謝が活発なためだ。皮脂や汗の分泌量が多く、新陳代謝が活発な分、最も汚れやすい部分でもある。
従来のシャンプー、トリートメントは頭髪を清潔にし、栄養分を与えようという考え方だったが、それだけでは抜け毛を防ぐことはできない。そこで、新たな考え方として登場したのが「スカルプケア」だ。頭髪の土台そのものである頭皮をケアしない限り、抜け毛、薄毛など頭髪に関する悩みは解決されないということだ。具体的には頭皮の血行を促進し、毛穴に詰まった皮脂、汚れ、老廃物などを除去し、頭皮そのものを健康にすることである。そのうえで、毛髪の中心器官である毛乳頭細胞を活性化して、発毛促進・抜け毛予防を行えば、健康的な毛髪を取り戻せるということになる。
江崎グリコの培養毛乳頭細胞実験では、ポスカと通常のカルシウムを培地に転嫁した対照実験をおこなったところ、ポスカの方が通常のカルシウムの1.5倍、毛乳頭細胞の増殖を促進する効果があったとしている。
異業種からの新規参入も期待される
国内化粧品市場は約2兆3000億円と言われている、うち4割と最大シェアを占めるのがスキンケアであり、これに続くのがヘアケアで2割超の約5300億円の規模とされている。最近では、育毛剤などで女性用スカルプケア市場が拡大しており、この10年で4倍に膨れ上がったという。スカルプケアは将来有望な市場であり、異業種などからの新規参入も増える可能性が高い。
化粧品メーカーなら、トップの資生堂 <4911> 、2位の花王 <4452> 、3位のコーセー <4922> 、ノエビアHD <4928> 、アイビー化粧品 <4918> がある。
スキンケアに特化した企業ならファンケル <4921> 、旧ドクターシーラボのシーズHD <4924> 、シーボン <4926> 、ハウス オブ ローゼ <7506> 、ハーパー研究所 <4925> 。ヘアケアではマンダム <4917> 、日華化学 <4463> 、ミルボン <4919> 、コタ <4923> などがある。
また、異業種では、今回スカルプケア市場への進出が明らかになった江崎グリコのほか、2014年6月に独自のナノ技術を使った「アスタリフト」ブランドでのヘルスケア市場への進出を果たした富士フイルムHD <4901> がある。ナノ技術ならナノキャリア <4571> や総医研HD <2385> など。マツモトキヨシHD <3088> 、サンドラッグ <9989> 、スギHD <7649> などのドラッグストアや、化粧品の口コミサイトを運営するアイスタイル <3660> などにも追い風となる。(金融ライター 鈴木ロミオ)
※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
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