再編プラス革新的な一手が求められる:資本力や近年の実績にみる高ポテンシャルの銀行は...
では、どのような銀行が事業モデルを改革できるのだろうか。それには、新しい業務を行うための資源(資本、人材、経営ノウハウ) と、経営陣の遂行への意思が必要であると考えられる。これらは定性的であり測定しにくいが、以下では、自己資本比率と近時の新戦略の取り組み実績から推定を試みる。
1)資本力の高さ
資本規制の厳格化もあるが、一部の地銀については、資本が極めて潤沢である。これらの銀行は、今後より大胆なリスクが取りやすいと考えられる。例えば、スタートアップ企業など従来貸出が難しかった先に対して投融資を行う余力もあり、また、現在討議中の銀行法改正後には、IT企業等異業種の買収も行うこともできるだろう。
なお、地域によっては、地震や噴火等災害時に備えて資本を厚めにしており、資本を使うのは難しい銀行もある。)
2)事業環境のひっ迫感
預貸率が低い銀行は、預金の割に貸出機会が少ないものと推測されることから、その分、業容の拡大に追い込まれる可能性が高いと思われる。例えば図表11では、資本は潤沢だが、預貸率が低く、貸出機会に恵まれない銀行(主に図の右下部分)を記載している。
3)革新的なことに挑戦する経営陣のマインドセット
しかし、投下できる資源に恵まれ、事業環境が厳しくても、新しいことに取り組む積極性がない限り、大きな進化を遂げるのは難しい。このような銀行の"気概"の面を外部から判断するのは難しいが、これまでに、小さくても何か新しい分野に参入した実績があった銀行は、より大きな挑戦に対しても前向きである可能性が高いと考えられるだろう。
例えば、証券子会社を有する銀行、運用子会社を設立した銀行などは、ある程度それに該当するだろう(図表12)。
これ以外にも、営業ノルマを廃止し全員を総合職とした北國銀行、企業の審査を将来性重視に変える「事業性評価貸出」のため独自の評価システムを開発した広島銀行、AI(人工知能)なども活用し個人向け融資を活発化する静岡銀行等の大手地銀なども注目される。
上記のことから、資本比率が地銀の中で上位にあり、過去1,2年程度での新規事業の取り組み度合いが高いか、または、事業環境の切迫度が高い先を、配当利回りが2%以上の銀行を中心に抽出したのが図表13である。
これらの銀行については、少なくとも長期的には、何等かの抜本的な施策を取る可能性が高いと考えられる。これらのどの銀行が、どのような形で施策を取りうるのか決め打ちしにくいが、いずれの銀行も、資本比率が高い上、株価純資産倍率(PBR)が低いため、自社株買いの余地も大きいことから、株価の下落リスクも限定されよう。
大槻 奈那(おおつき・なな)
マネックス証券
チーフ・アナリスト
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