IPO
(写真=Thinkstock/Getty Images)

投資家にとって大きなチャンスの一つともいえる新規株式公開(IPO)。本来的には大規模かつ機動的な資金調達手段を確保し、企業の成長後押しも効用の一つだといえるだろう。他方で、一般投資家にとっては、IPOは高い確度で利益を得られることから、一般的に人気も高かった。

ただ、IPO企業の創業者や、創業当初に出資した投資家らが、株価の値上がりと売却益の確保を狙っているだけと疑われかねないケースもあり、問題もささやかれている。こうした事例は2015年に「上場ゴール」問題として社会的な避難の対象ともなった。結果、IPO市場も一時的に冷え込むかに見えた。

ところが、である。最近では、再び新規公開株への投資が増加しており、マーケットに変化がみられる。今回はそんな、復活しつつあるIPO市場の動向について解説する。

「上場ゴール」問題で大騒動を起こした2015年

一般的に、株式の公開価格は公開企業の成長力を保守的に見積もって算定するとされている(主幹事証券会社が仮条件であるブックビルディングの参考価格レンジを控えめに設定する)。

そのため、公開後に市場の期待がそれを上回る(株価が上昇する)ケースが多い。少なくとも、最初の四半期決算の開示が行われるまでは、期待を否定する具体的な材料はほとんど見当たらないため、株価が上昇傾向を辿る可能性が高く、投資家からの期待も高くなりがちだ。

しかしながら、期待を裏切る事態が生じないわけではない。中には、IPOから間もなく、業績見通しの下方修正などの悪材料を開示したことにより、株価が公開価格を下回る水準で推移するケースもみられるのだ。

典型例として挙げられるのが2014年12月に東証1部へ新規上場した gumi <3903> だ。株価は初値が3165円だった一方で、最低水準で2015年3月5日には2581円まで下げていた。さらに、上場からわずか3カ月足らずで、売上高の14%減と赤字転落(経常利益の19億円減)となる業績見通しの下方修正を開示。結果として、2営業日後の3月9日の終値は1581円まで同社の株価も下がった。

また、業績見通しの修正だけでなく社長の姿勢にも批判が噴出。IPO時に國光宏尚社長が3億9600万円の株式を売却しており、悪材料を隠したままIPOに踏み切ったのではないかとの憶測が流れ、不信感が広まったのだ。

日本取引所グループ <8697> は、2015年3月31日に「最近の新規公開を巡る問題と対応について」を公表し、「最近、新規公開会社の経営者による不適切な取引など、新規公開に対する株主・投資者の信頼を損ないかねない事例が散見されます。こうした事例の発生は、今後の新規公開ひいては成長企業への円滑な資金供給に水を差しかねないものであり、決して看過できるものではありません」と述べ、IPO準備企業の経営者や主幹事証券会社に対し釘を刺した。

米国IPO市場は底で横ばい

海の向こうへも目を転じておこう。米国のIPO市場だ。太平洋の向こう側では、冷え込みが窺われており、2016年のIPOは1月には、1社の上場もなし。2011年以来の低水準で推移した。2月3日にようやく、バイオテック系企業2社が上場し少しばかり、盛り返したところだ。

投資銀行のルネサンスキャピタルによると、2015年には170社がIPOしたものの、前年比39%減の水準で2009年以降最も少ない年だったという。2016年はさらに低調で昨年を下回るIPO件数になる可能性が高い。

ほかにも、10億ドル以上の評価額を獲得し、いわゆる「ユニコーン企業」だとみられていた米国の、血液検査ベンチャーのセラノスが検察の捜査対象になるなど、IPOなどを目指すスタートアップにとってのムードは決して良くはない。

もっとも、リサーチ企業CB Insightsの「2016 Tech IPOレポート」は、2015年に10億ドル以上の評価額で資金調達した米国に拠点を置く企業は80社ありその中の36社はIPOが近いと報じており、前向きな材料もみられ、今後の動向は慎重に見極めなければならないだろう。

日本では新規公開株への流入資金が増大!

米国から再び、太平洋を越えて、日本に視線を戻そう。すると、視界に入るのは、対照的な姿だ。

具体的には、過去1年間に上場した企業の株価動向を示す「QUICK IPOインデックス(単純平均)」は2016年4月19日に12万9824に達し、2015年8月の(13万317)に次ぐ高値水準を記録するなど好調を示しているのだ。

4月19日に東証マザーズに上場した求人情報サイト運営のグローバルウェイ <3936> は終日買い気配が続き、上場初日は取引が成立しなかった。公開価格で購入するための応募倍率は100倍を超えた模様だ。自動運転用ソフトを手掛けるジグソー <3914> やシステム開発のアイリッジ <3917> など株価収益率(PER)が100倍を超える銘柄も出てきた。

最近では、「上場ゴール」といって揶揄するムードもなく、上場時の初値が公開価格に比べ高騰しなかったが、徐々に成長期待が高まったり、上場後に業績見通しの上方修正を行ったりした銘柄が指数上昇を牽引しており、調子は上向きだ。

背景にあるのは、gumi の問題などを踏まえた日本取引所グループの審査の厳格化だろう。そのため、IPO時に根拠が薄弱な甘い業績見通しを開示する企業が減り、上場後に投資家がじっくり業績を見極める傾向が強まっていることが好循環を生んでいるようだ。

IPOはやはり魅力的な投資

一般的にIPO銘柄は潜在成長力が高いと考えられる。超低金利で預金や債券の利息収入の獲得をほとんど見込めない状況を踏まえれば、それが追い風になる(資金調達負担が軽くなる)新興企業へ投資することは合理的だろう。

銀行を始めとする金融機関も日銀の金融緩和政策がマイナス金利にまで踏み込む中、成長期待の高いIPO企業への資金供給に前向きなはずだ。売上高が伸び悩んでいる老舗企業のテコ入れよりも勢いのある新興企業のビジネス拡大を支援する方が即効性と成長性の両面から期待できる。

日銀の金融政策が近い将来に引締めへ転じる可能性はゼロと断言できる状況にあり、当面は株式市場の中でも成長期待の高いIPO銘柄への投資が増加し続ける可能性もあるだろう。(ZUU online 編集部)

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