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(画像=Webサイトより)

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無料コミュニケーションアプリ「LINE」を運営するLINE株式会社が、7月15日ついに東京証券取引所に上場するようだ。上場市場は未発表だが、東証一部が有力視されている。上場時の時価総額は約5880億円の見通しだ。同社のIPOの特徴として挙げられるのが、東京とニューヨークでの同時上場を行う点である。ニューヨーク証券取引所には7月14日(現地時間)に上場する。日本企業が日米同時上場を行うのは今回のIPOが初めてとなる。本稿では、複数国上場のメリット、デメリットに加え、過去のケースも紹介したい。

複数国上場のメリットの一つは知名度向上

メリットとしてまず挙げるべきは、「国外での知名度向上」だ。

メッセージアプリとして我が国では不動の地位を築いているLINEだが、海外でのユーザー数に関してはまだまだこれからといった状況である。アジア進出は進んでいるが、欧米では競合の「WhatsApp Messenger」や、「Facebook 」の「Messenger」などに大きく引けを取っている。

ニューヨーク証券取引所に上場することで、知名度の大幅な向上が見込め、より積極的な海外進出が可能になるだろう。

LINEはメッセージングアプリ事業以外にも、多角的な事業展開を図っているが、それらの事業の収益基盤となるのは、何と言ってもユーザー数。複数国上場により、知名度向上を図り、ユーザー数増加の機会を獲得し、「LINE経済圏」の拡大を志向するのは理にかなった戦略だ。

また海外投資家からのマネーの取り込みといった資金調達の多様化を図ることができる点も、メリットの一つといえるだろう。

逆にデメリットには費用などのコスト増

複数国上場のデメリットとして、真っ先に挙げるべきは、「上場維持費用がかかる」ことである。取引所からは「適時開示」を求められ、四半期ごとに決算を締めて、45日以内に開示しなければならない。

また株価に影響がありそうな事実が発覚した場合、「即時公表」しなければならない。こうした開示義務に対応するためにも、実務経験者の確保やシステム投資も避けて通ることはできない。

さらに異なる会計基準での開示資料作成となると、ますます骨が折れる作業となる。

外国人株主の増加から、アクティビスト対策等も必要となってくる。複数国で上場した場合、これらの手間がダブルでかかってくるわけだ。

複数国上場を果たしているのはどんな企業?

グローバルに事業を展開する多国籍企業の中には、複数国での上場を果たしている企業も存在しており、2016年3月時点では、ニューヨーク証券取引所には、以下の15社の日本企業が上場している。

アドバンテスト、キヤノン、本田技研工業、コナミホールディングス、京セラ、三菱UFJフィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、日本電産、NTT、野村ホールディングス、NTTドコモ、オリックス、ソニー、三井住友フィナンシャルグループ、トヨタ自動車
(Advantest、Canon、Honda Motor,Konami,Kyocera,Mitsubishi UFJ Financial,Mizuho Financial,Nidec,Nippon Teleglaph and Telephone,Nomura,NTT Docomo,Orix,Sony,Sumitomo Mitsui Financial,Toyota Motor)

いずれも、資金調達手段の多様化や米国での知名度やブランドイメージの向上を目的としているようだ。

複数国上場を取りやめているケースも

一方で、複数国上場を取りやめているケースも過去には散見される。実際、パイオニアは2007年1月に株式事務の合理化を理由にNYSE上場を廃止しており、TDKも「取扱高が少なく、上場を続ける経済的合理性がなくなった」として、2009年4月に上場を廃止している。

また日立製作所も、2012年4月にニューヨーク証券取引所に上場廃止を申請している。

日米上場以外の複数国上場も増えている

最近では、香港やシンガポールの証券取引所で上場している日本企業も増加傾向にある。

日本では、JASDAQやマザーズ等の新興市場の上場時は、通常2年から3年程度の時間を要する一方、香港には内部統制監査制度がないため、上場企業に要求される内部統制の水準が日本ほどには高くなく、内部統制よりも事業の成長性や収益性が求められる傾向にあり、通常半年から1年以内に上場が可能なのだ。

さらに香港で上場を果たした場合、期末監査以外の監査人による四半期レビュー制度や内部統制監査制度がないこともあり、上場するための初期費用や上場維持コストが低く抑えられることもメリットとして考えられる。

実際、香港証券取引所には、3社の日本企業(ダイナムジャパンホールディングス、ニラク・ジー・シー・ホールディングス、ファーストリテイリング)が上場しており、シンガポール証券取引所には、4社の日本企業(野村ホールディングス、村田製作所、MARUWA、ジークホールディングス)が上場している。

以上のように、複数国での上場には多くのメリットがあり、事業を飛躍的に成長させる可能性がある一方、コスト面等のデメリットも少なからず存在する。

自社が今後目指す姿を明確にした上で、はたして複数国で上場する選択がベストなのか、はたまた上場自体がベストの選択肢なのかについて確り検討することが重要だと言えるだろう。

(ZUU online 編集部)

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