出る杭は打たれるの言葉通り、人と同じように企業でも収益と存在感を増すにつれて風当たりが強くなるのは、資本主義社会の宿命のようなものだろう。
4月20日に欧州連合(EU)執行機関の欧州委員会がGoogleに対し、独占禁止法に違反しているとして意義告知書を送付し警告している問題は、「王者であるがゆえの試練」であるといえる。
「昨日の敵」は「今日も敵」
GoogleとEUが「支配的地位の乱用」をめぐって争うのはこれが初めてではない。
2010年以来、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は、Googleが検索結果を自社に有利になるよう操作したという競合他社の申し立てに沿って、独占禁止法に基づく調査を行ってきた。
そして、今回欧州委が問題にしているのは、Androidという圧倒的シェアを誇るスマートフォンのOSを有する立場を利用して、自社のアプリを半ば強制的にスマートフォンメーカーに採用させていること。そして、自社のショッピングサイト「Google Shopping」を他社の同じサービスよりも優先的に表示させるようにしていることにある。
Microsoftとの比較
欧州委とGoogleの対立を見ていくと、かつて同じように欧州委と対立し、2004年に4億9千7百万ユーロ(約620億円)もの課徴金を支払ったMicrosoftを思い起こさせる。
しかし、Googleの戦略はMicrosoftよりもずっとしたたかだ。2000年前半にMicrosoftがパソコンのOSであるWindowsとインターネットブラウザーのInternet Explorerを抱き合わせにしてパソコンと一緒に販売したような強引なやり方はとっていない。
Googleの元CEOであるエリック・シュミット氏は米国上院委員会において繰り返しこう発言している。
「モバイル市場において、あらゆる意味での自由な競争を促す環境を提供している」
Googleの狙いは何か?
こうした表向きの態度とはうらはらに、Googleは欧州の市場において競合他社を圧倒的に引き離す存在として君臨している。
Androidを無料にすることやスマートフォンのホーム画面にアプリのマーケットであるGoogle Play Storeや動画アプリ、地図アプリを配置して、ユーザーに最初から当たり前のアプリとして使わせることに成功している。
こうしたマーケティング手法をとる一方で、欧州委との対立を続ける意図はどこにあるのか。それは、欧州委員会との係争が長引く間に、より強固な地盤を固めてしまおうというものだ。したがって、裁判が長期化すればするほど、自らの欧州における立場が強固になり、得はしても損になることは何もないのである。
米国に遅れをとる欧州
一方で、欧州委はなぜこれほどまでにGoogleを執拗に追い詰めようとするのか。欧州委の狙いとは何なのか。その根底にあるのは、欧州の米国に対する「嫉妬と羨望」だ。
二度の世界大戦を経験した欧州は、二度とその轍を踏むまいとして欧州連合を成立させた。総人口5億人にもなる大きな統一地域は、超大国アメリカをもしのぐものして、欧州に明るい未来を約束したかに見えた。
しかし、現実は理想通りにならず、現在の欧州はユーロ圏経済の低迷や移民問題で混迷を深めている。その上、デジタル革命に乗り遅れ米国由来の新興IT企業に市場を湿られている現状があり、それを何とかして打開したいとして政治力を行使しようとしているのが、欧州委なのである。
日本は米国と違って廃業率が開業率を大きく上回る硬直した経済環境にある。企業経営者が自分の保身と現状維持のみを考える存在になってしまっていることが、日本企業の弱点かもしれない。(ZUU online 編集部)
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