統計上では賃金は徐々に上向いているようだが、あなたの給料は増えているだろうか。厚生労働省が発表している「毎月勤労統計調査 平成28年度3月分結果速報」によると、企業の常用雇用者数は前年同月比で2.2%増となり、実質賃金も前年同月比の1.4%増となった。
しかし、実際のところ給料が増えたという人は少ないだろう。なぜなら、企業が支払う総賃金は増加しているが、同時に採用人数も増やしているため、一人あたりの賃金は増えないということだ。
企業も将来に不安を感じている
全国銀行協会の「預金・貸出金速報 平成28年4月末」によると、全国銀行の実質預金は前年同月末比4.9%増となり、増加は115ヶ月連続とのことである。預金が増えているという事実は、大部分の人が稼いだお金を将来に備えようとしている気持ちの表れといえる。
また、サラリーマンの給料がなかなか上がらないのも、基本的には同じ理由だ。つまり会社も将来に対して不安を感じているため、給料を上げることに慎重になっているのである。
日本銀行が2016年4月1日に発表した、3月調査の日銀短観(全国企業短期経済観測調査)によると、企業の景況感を示す業況判断指数DIが、大企業の製造業で6ポイント、非製造業で3ポイント、ともに前回調査を下回る結果となった。
数字が下がったということは、「景気が悪い」と答えた企業がそれだけ増えたということである。原因は新興国経済の減速や円高、依然弱い国内消費など、いくつか考えられるだろうが、こうした要因が今後、急激に改善するとは考えにくい。会社にとって、将来を楽観視できる材料は見当たらないのである。
「正社員」というコトバは無くなる?
ここで私見を述べさせてもらうと、筆者は今後「正社員というコトバは無くなる」と考えている。
その理由の第1として、正社員はコストがかかり過ぎる。社会がグローバル化し、会社は常に他国企業との競争にさらされている。人件費が高くつくことはその分、競争する上で不利になる。
特に日本が少子高齢化社会を突き進むことは、すでに「決まった未来」である。社会保障費の増大は避けられず、会社の負担分も当然増えていく。今のままでは、それらは結局、商品価格に上乗せせざるをえないだろう。
第2に、会社は社員を一度雇用してしまうと、容易に解雇できない。それがかえって会社が正社員採用を控える原因になっており、さらには一度離職した者の再就職を阻むことにもつながりかねない情勢となっている。労働市場を活性化させるためにも、もっと人を流動化させることが望ましいと考える。
第3に、優秀な人からすれば、正社員は魅力的な待遇とはいえない。サラリーマンとは一般的に、部や課などで団体責任を負う代わりに、給料もみんなで分け合っている。それがこれからは、プロジェクトごとにふさわしい人材を集めてチームをつくり、終われば解散して、また別のチームをつくるといった仕事の進め方が主流になる。そうなると、従来型の給与体系では対応できなくなるだろう。
会社は給料を払いたがっている
では、どうしたら給料が上がるのだろうか。筆者が思うに、給料を上げるには2つの方法しかない。1つ目は会社が「よりよい未来を信じられる」ようになること。もう1つは社員が「予想を超える貢献をする」ことである。
すでに見てきた通り、今のところ会社にとっての安心材料はあまりない。つまり、給料を上げるために個人でできるのは「予想を超える貢献をする」ことである。
実は、会社は「もっと給料を払いたい」と考えているのをご存じだろうか。もともと、会社にとって給料とは「先払い」である。確かにお金は後払いだが、従業員と雇用契約を結んだ時点で、会社にとってはその給料を将来支払うことが確定している。契約金額は、会社が社員の働きを予測した上で算出し、交渉する。
しかし実際に稼働してみると、中には予測を大幅に上回る成績を上げる者が出てくる。会社にとっては、そうした給料以上の働きをしてくれる者を、絶対に手放したいとは思わない。逆に、契約金しか払わないでいたら、その社員がよそへいってしまうのではないかと気が気ではなくなる。
こういうときに、会社は「もっと給料を払いたい」と考え、それが契約上難しい場合は、たとえば昇進や花形仕事を与えるなど、別の方法で報いようと必死になる。会社にとって「手放したくない人間」になれば、景気など関係なく、会社は昇給か代替え手段を提示してくるものなのである。
会社とは「満足させるべき相手」のこと
今回は「給料を上げる方法」ということについて、例を挙げてお伝えした。どのような雇用形態であれ、会社の一員である限り、会社の意に沿った行動をとらなければならず、相手を満足させ、希望通りの結果を手に入れるには相手目線で考えることが必要である。
俣野成敏(またの なるとし)
1993年、シチズン時計株式会社入社。31歳でメーカー直販在庫処分店を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)や『一流の人はなぜそこまで◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に10万部超のベストセラーに。2012 年に独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、「お金・時間・場所」に自由なサラリーマンの育成にも力を注ぐ。
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