Appleが5月12日、中国の配車サービス、Didi Kuaidiへ10億ドル(約1088億6000万円)の出資を発表した。インタビューに応じたティム・クックCEOは今回の投資について、「中国市場の断片を理解するということも含め、いくつかの戦略的な理由がある」と思わせぶりな発言をしている。

Appleにとって世界第2の市場である中国だが、規制圧力の強まりや売上の減速などすべてが順風満帆というわけではなさそうだ。またiPhoneの売上げも熟成期に入ったといわれており、クックCEOはこうした状況を解決する糸口として、新たな切口から収益面に活力を注入しようと目論んでいるのだろう。

アナリストの間では近年自動車産業と共有経済に力を入れているAppleの動きに、「iPhone人気が頂点に達したと見切って、今後は事業の多様化を目指すのではないか」との見方が強まっている。

中国市場参入の入り口として理想的なパートナー?

2012年に北京で設立されたDidi Kuaidiは、スマートフォン専用の配車サービスという点で米Uberと類似する。

しかしDidi Kuaidiは利用件数1日1100万件という驚異的な数字で中国の配車市場の87%を独占する「中国版巨大Uber」であり、時価総額は既に200億ドル(約2兆1778億円)に達している。Appleという強力な援護者を得たことで、、昨年6月に同じく10億ドル(約1088億6000万円)を投じて中国に進出した本場Uberにとって、太刀打ちできないライバルとなる力を得たことになる。

Uber Chinaの時価総額はわずか80億ドル(約8711億2000万円)。スタート点から大きく差を開けていることは一目瞭然であり、クックCEOは「今後も中国がAppleにとって巨大な市場であるという状況は継続するはずだ」と、Didi Kuaidiが中国における輸送産業の参入の入り口としては、理想的なパートナーであるとの見解を示した。

昨年の中国経済の失速にともない、各大手国際自動車メーカーが生産量の調整に入っている中、共有経済に基づく「配車、共有サービス」や「ロボットカー(自動運転車)」など新たな自動車市場の開拓に希望が託されている。

2014年から3年間にわたり120億ドル(約1兆3067億円)を投じて工場増加計画に着手中の米ゼネラル・モーターズは、3月に米ロボットカー・テクノロジー会社、Cruise Automationを買収したほか、サンフランシスコの共有車サービス会社、Lyfyにも投資を行っている。

こうした様々な背景から、ロボットカーの開発を進めているAppleが次世代自動車市場を切り開く場として、人口13億人を超える中国を選んだのはごく自然の流れだろう。クックCEOは今回の発表後に自ら北京を訪れるなど、大変な気合の入れようだ。

Didi Kuaidiを通した「配車」と独自の開発による「ロボットカー」の二手から、Appleが次なる輸送産業の旗手となる日もそれほど遠い未来ではないかと思われる。5年後にはAppleカーの配車、共有サービスが日常的に利用される世の中になっているかもしれない。(ZUU online 編集部)

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