英国のEU離脱は英国人がこよなく愛するプレミアリーグにも影響を与えるかもしれない。昨年の収益は33億ポンド(約4729億8451万円/前年比29%増)という巨大スポーツ産業であるプレミア。急落したポンドの影響と「EU間の自由」の失効で、経済的打撃と選手確保の危機にさらされかねないのだ。
ポンド安、労働ビザ問題が成長を妨げる
国民投票でEU離脱が上回る結果となり、ポンドは対ドルで急落。1985年以来の水準となったとBloombergは報じている。
さらにポンドが弱く、ユーロが強くなれば、プレミアにおいて国外選手の獲得金額に大きな差が開く。また「EU間の自由」が失効すれば、国外選手の確保にわずらわしい労働ビザ取得の必要性が出る。
リバプール大学のスポーツ経済学者ババトゥンデ・ブライモ氏は、「英プレミアリーグが海外の優秀な選手を招きいれる間口を著しく狭める」との懸念を示している。
EU加盟国選手の「労働ビザ不要」特権は失効?
現在非EU加盟国の選手には労働ビザの取得が義務づけられているが、「自国チームで一定のパーセンテージを満たすプレー経験があること」という基準が設けられている。
英国がEUに加盟していたことで、本来は基準を満たさない100人以上のEUプレミアリーグ選手がビザ取得から免除されていた。
つまりディミトリ・ペイェ(ウェストハム・ユナイテッドFC所属)やエンゴロ・カンテ(レスター・シティFC所属)といった選手は、昨年プレミアリーグに参加した時点では国際経験が浅く、当時英国がEUに加盟していなければ、英国でプレーできていなかったことになる。
優秀なスポーツ選手には優遇措置も検討?
またEUの規約から外れることで、18歳以下の若手選手の発掘が困難になることも予想される。
そうなれば「雇用主」として優位に立ったEU加盟国に、軍配があがることは容易に想像できる。つまり英プレミアリーグから優秀な選手が国外に流れだし、新しい才能を育てることもままならない状況になっても不思議ではない。
せっかく高まっている英プレミアリーグの勢いをとめてしまうには、非常に惜しい話だ。
こうした背景を考慮して、プレミアリーグを含むスポーツ枠には何らかの優遇が検討される可能性は高い。これまでも特殊な技術をもつ非EU加盟国の労働者には、一定の優遇措置がとられていた。
英国際法律事務所Mishcon de Reya LLPでスポーツ関連の移民手続きを担当しているマリア・パトサロス氏は、英スポーツ機関が現在の規定を維持する、あるいは一部を書き換えるほかに、まったく新しい規定を設ける可能性も示唆している。
すでに英国で活躍中のEU選手はそれらの新規制から免除されると見られているが、「今後新たに英国でのプレーを試みる選手にとっては、これまでのように簡単にいかないだろう」とコメント。
英国の自由と引き換えに自由を失った英プレミアリーグ
現在国外の投資家に大人気の英プレミアリーグだが、成長の勢いを失ってしまえば、そうした投資も下火になることが予想される。
これらの投資家の関心は、ポルトガルやスペイン、イタリアといったほかの欧州クラブやアジアに流れていくだろう。
英国が自国の自由を取り戻した代償のひとつとして、「英プレミアリーグの自由」は消滅してしまうのか--歴史をゆるがす激動のBrexitは、まだまだ霧に包まれている。(ZUU online 編集部)
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