長年くすぶっていた英国とEU諸国の関係を一夜にして清算したBrexit。その影響が直撃するといわれている隣国、フランス。両国の愛憎が交差した対立的とも友好的とも受け取れる関係に、歴史を塗り替えたBrexitがもたらす影響については、様々な憶測が飛び交っている。

フランスの反応もこれまでの両国の歴史同様、対立と支持が入り交じったものだ。

JPモルガン予想 経済的影響は低め?

最も重要視される経済効果について、国際通貨基金(IMF)は2019年までにフランス経済が0.2%から0.4%低下すると予測している。

しかし米JPモルガンのストラテジストなどは、英国への輸出がGDPのわずか2%しか占めていないことを理由に「英国への輸出が7%を占めるベルギーやオランダが受けるほどの衝撃にはならない」と、真っ向から観測が対立している。

いずれにせよアイルランド、オランダ、ベルギーなどの経済が、最高0.5%落ち込むと予想されていることと比較すれば、フランス経済が最悪の事態に陥ることは想像しがたい--という見方が強い。

フーラード仏欧州議会議員「EUの特権は認めない」

英国民が共同体からの独立を選択したという事実についても、政府内で反応が割れている。

国民投票の結果発表後に開かれたEU首脳による緊急会合で、ジャン・クロード・ユンケル欧州委員会委員長は「離脱プロセスがいかに困難を極めるとしても、速やかに手続きを開始せよ」と辛辣な態度をつらぬいた。

ユンケル委員長の姿勢に、フランソワ・オランド仏大統領は全面的に同意。「(Brexitは)痛恨の決断だ。欧州にとって深刻な挑戦となる」と、英国の決断をネガティブに受けとめている。

英国のEU離脱は、英国企業は勿論、英国を拠点にEU諸国で事業を展開している事業にも多大な影響をおよぼす。例えばEU諸国向けの輸出商品を英国で製造している企業にとって、EU加盟国の特権のひとつであった関税免除を失いかねないーーという打撃が、かねてから懸念されていた。

シルヴィ・フーラード仏欧州議会議員は、英国離脱が決定する以前に米メディアを通して、これらの企業にEUの特権を与えない意向を明確にしている。

また現在フランスに在留する1万6000人の英国人の移住権についても、今後ビザの取得が義務づけられる可能性がある。

国民戦線党首「仏でも国民投票を」

その一方で国民戦線の女性党首マリーヌ・ル・ペン氏は、自身のTwitterページにユニオンジャック(英国旗)を掲げ、Brexitを称賛。フランスでも同様の国民投票実施を呼びかけている。

ペン氏は6月17日にも「フランスがEU離脱を望む理由は1000個以上ある」とコメントしており、「自国の高失業率、テロ、移民問題などの責任はEUにある」と、共同体が理想通りに機能していない点を非難している。

デュアメル氏「仏は英EU離脱を悲しまない」

世論という観点から見ても、英国のEU離脱を支持する傾向が最も強かった国がフランスだ。

4月に行われた調査で「英国はEUに残留すべき」と回答した国民はわずか28%。

「Brexitが現実化してもフランスは嘆き悲しまないだろう。EUはあまりにも英国色に染まっている」という仏ジャーナリスト兼政治家アラン・デュアメル氏の言葉通り、フランスにとって英国は「目の上のタンコブ」的存在でもあったようだ。

また英国から自国へ企業が流出し、経済の活性化を狙えるという希望も抱いている。今年の国内総生産(GDP)が、英国を上回る3兆1240億ドル(約319兆2415億円)に達すると見込まれているだけに、逆境を逆手にとり、英国なき後のEU繁栄の野望に燃えている様子がうかがえる。(アレン・琴子、英国在住のフリーライター)

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