東証マザーズ指数先物
(写真=PIXTA)

2016年7月19日マザーズ市場の動きを示すマザーズ指数に先物「東証マザーズ指数先物」が初登場する予定だ。

マザーズ市場は、最近でもブランジスタやアキュセラ、そーせいなどの株価の動きに見られるように株価が乱高下する傾向がある。成長性の高い企業やテーマ性の強い銘柄が上場しているため、利益を積極的に追い求める個人投資家からも人気の高い市場だ。

当然、指数先物が登場すれば市場に新たな資金が流入すると同時に、先物と通常の株式(現物)との間に少なからず相関性が生じることとなる。先物指数が登場した後のマザーズ市場において、個人投資家にとって何が変わるのか。どう動けばよいのかを見ていくことにしよう。

マザーズ指数先物は「売り」から入ることが可能

先物の特長の一つに売りから入ることができるというものがある。

これまでマザーズ銘柄は一部例外はあるものの空売りをするということができなかったので、株価が一方通行に上がり続けることが多かった。しかし、指数先物を使用すれば、指数が下がると利益が出るショートポジションを持つことができる。

わざわざマザーズの銘柄を空売りせずとも、投資家の買いでぱんぱんに膨れ上がったマザーズ市場を逆手にとって儲けを出すことが可能となるのだ。

これは個人投資家にとって収益チャンスが増えることを示すが、じつは個人投資家よりも資金力の高い機関投資家や外国人投資家、ヘッジファンドなどに有利な商品である可能性が高い。

なぜなら相場の世界ではしばしば「先物主導で株価が動く」という現象が起きるからだ。

「先物主導で株価が動く」の意味とは

指数先物とは、日経平均先物やTOPIX先物などの事を指すが、基本的にこれらの指数の値は一人歩きして決まるものではなく世界経済や個々の企業業績の行方、金利や為替の動向といったさまざまな要因で決まる。

それらの指数を構成する株式がなんらかの事情により売られることが想定されれば、その売りを織り込んで指数先物は動きを見せる。

その意味で本来の先物とは現物株式の動きのいかんによって左右されるものなのだ。

しかし、実際の相場では必ずしもそのような原則的な動きをすることは少なく、「先物を動かすことで強引に現物を動かす」と言う現象が起きる。これを相場用語では先物主導で株価が動くという。

先ほどもご紹介したが、先物は売りからはいること(ショート)ができる。つまりマザーズ銘柄を現物を売る必要なく売り崩すことも可能になるということだ。

これは資金力のある投資家もしくは投機家にとって短期的な収益を狙うために利用されやすくなることを意味する。これからはより一層マザーズの値動きは荒っぽくなることが想定される。

個人投資家はマザーズ先物の動きに手持ちの現物株が振り回されることが多くなるだろう。ただ個人投資家もマザーズ指数を上手に利用することでいわゆるヘッジ(保険のようなもの)として先物を使用することも可能だ。これについては後程解説をする。

そーせい、サイバーダイン、ミクシィの動向を注視せよ

マザーズ指数先物は時価総額加重平均型の株価指数だ。これはTOPIXと同じように、時価総額の大きな銘柄の影響を受けやすいということになる。つまり現在マザーズ銘柄でも時価総額が大きなそーせいやサイバーダイン、ミクシィなどの影響を受けやすいことになる。

つまりマザーズ指数先物を取引するのであれば、それらの銘柄の値動きはしっかりと見ておく必要があるということだ。

マザーズ全体が軟調だったとしても例えばそーせいやサイバーダインに好材料(ビッグニュース)が出て大幅に上昇するようなことがあれば指数にも少なからず影響を与えて、先物指数は上がって行くはずだ。そうなると、マザーズ指数先物をショート(指数が上がると損が出る取引)している投資家は損失を抱えてしまうことになる。

指数先物を取引するということは、指数に影響度の高い銘柄を意識して取引するということでもあるのだ。

マザーズ先物指数の例外的な活用方法

指数先物の使い方の一つとして「ヘッジ」というものがある。ヘッジとは保険と同じような意味合いで使用される。例えばマザーズの銘柄を買いで保有している際にそれと同金額程度の先物をショートで保有する手段だ。相場全体の先行きが分かりにくい時に使用すると効果的だ。

特にマザーズ銘柄の中でも話題性があり業績拡大期待の銘柄を保有している場合に、先物のショートを同時に組むことで相場の下げによる影響を緩和することができる。特にテーマ性の高いマザーズ銘柄は多くの投資家ができるだけ安く仕込みたいと思っているので、株価の下支えがある。個人投資家でマザーズ指数先物をヘッジとして利用するのであれば、この使い方が妥当なところだ。

ただこの場合も、もし手持ちの株式が大きく値下がり、先物が上がってしまうといういわゆる「また裂き」と呼ばれる現象が起きた場合に、損失をくらうこともあるのでヘッジはあくまで戦略的に利用したいものだ。

指数に先物が登場することで、これからは投資の戦略が増えることになる。しかし一方で、市場に多種多様な資金が流入し、個人投資家を食い物にしようとする動きも出てくることを認識しておくべきだろう。適切な使用法を理解したうえでマザーズ市場のダイナミックな動きを利益の源泉にかえると良いだろう。なお商品の詳しい概要については 東証のHP を参考にしてほしい。

谷山歩(たにやま あゆみ)
早稲田大学を卒業後、証券会社において証券ディーリング業務を経験。2級ファイナンシャルプランナー。ヤフーファイナンスの「投資の達人」においてコラムニストとしても活動。2015年には年間で「ベストパフォーマー賞」「勝率賞」において同時受賞。ネットマネーや日経マネーと言った経済雑誌での執筆活動も行う。個人ブログ「 インカムライフ.com 」を運営。

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