消費者の80%が「何らかの貯蓄をしている」にも関わらず、失業など万が一の場合1カ月以上生活を支えるのに十分な貯蓄があるのは59%、高所得者ですら19%が3カ月以上もちこたえられない現状が浮き彫りになった。

これは英国で行われた、「ワールド・クラス・ペイメント」による調査で、昨年のクレジットカード負債額が世界一の910億ドル(約9兆3475億円)を記録した負債大国でもあるという事実と、EU離脱による先行きの不透明さが長期化するであろう現実を掛け合わせてみると、巨大な黒雲が英国をおおい始めている気がしてならない。

経済危機が落ち着くたびに浪費が始まる?

この調査は英バークレイズ銀行が消費者の貯蓄動向を見極める目的で、消費者へのアンケートと貯蓄口座預金額を照らし合わせたものだ。

調査では65%が「貯蓄は必須」、53%「衝動買いで負債をかかえるのは嫌。将来のために貯蓄したい」と回答しているが、近年一般家庭による貯蓄率は年々減少しており、金融危機以前の浪費癖がジワジワと舞い戻り始めている気配がする。

1992年のポンド危機直後には国民がこぞって貯蓄に走り、1997年の統計では13%まで上昇。しかし緊張の糸が切れ、裕福な暮らしに慣れ始めた2008年には、一気に5%まで落ちこんでいる。

2009年のリーマンショックで再び11.8%まで復興するが、落ち着きとともに貯蓄離れはさらに進化。2015年第1四半期の平均貯蓄率は4.9%となっている。

210万人がISAを開設しているが、40%が2015年4月からの1年間、1ペンス(約27円)たりとも入金をしていない。

ジェネレーションXの4割、全収入が生活費に

特にジェネレーションX(1960年~1974年前後に生まれた世代)は最も貯蓄とかけ離れた生活環境を強いられており、42%が「収入のすべてが生活費に消化される」と答えている。

英国でも高齢化が進み、2058年には60歳以上が占める割合が、現在の22%から31%へ増えると予想されている。しかし将来を年金や不動産のみにたくすには、世界のあちらこちらで不安要素が溢れすぎている。

また英国の平均結婚年齢は女性が34歳、男性が36.5歳(2012年統計)と、20年間で8歳高くなっている。日本の29歳、30.7歳よりもはるかに高い数字だ。

出産年齢も35歳以上で初出産する女性が、25歳以下で初出産する女性を上回るなど、家庭を持って将来のために貯蓄を始める時期自体が非常に遅くなっている。

52%が「住宅を購入したいが貯蓄していない」、59%が「3年以内に結婚する予定だが貯蓄していない」、70%が「3年以内に子供が欲しいが貯蓄していない」など、その日暮らしといった感がぬぐえない。

バークレイズは貯蓄の重要さを消費者に呼びかけているが、所得を上回る生活費、ローンの返済、浪費への要求ーーと、英国の国民の多くは、「消費のスパイラル」から抜け出せずにいるようだ。(ZUU online 編集部)

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