「英EU離脱で米国の不動産がさらに高騰するのではないか」という声があちこちから聞こえ始めている。

米国ではすでに近年、再び不動産価格が高騰傾向にあり、今年5月には住宅販売平均価格が23万9700ドル(約2457万円)に対し、サンフランシスコ・ベイエリアでは70万ドル(約7176万円)と約3倍を記録。

英国同様、テナントやファーストタイム・バイヤー(初めての住宅購入を検討している買い手)には逆風が吹いている。

それと同時にBrexitにともなうポンドの暴落や欧州経済の不透明性が、米住宅価格を一段と押し上げ、2007年のサブプライム住宅ローン危機以前の住宅バブルが到来する可能性を唱えるアナリストもいる。その後に待ち受ける第2のサブプライム崩壊、そして新たな世界経済危機への懸念も高まっている。

Brexitによる住宅ローン金利引き下げの可能性

2008年のリーマンショック後、マイナス金利導入などによって瞬く間に回復した米住宅価格。昨年12月からの利上げの影響か、今年4月に若干の失速が見られたものの、特にニューヨークなどの大都市では記録的な高騰が続いている。

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス・ケース・シラー全米住宅価格指数によると、今年1月の時点で、住宅価格はインフレの2倍の速度で上昇していた。

英国の国民投票の翌朝、米10年物国債は1.43%(0.32ポイント減)まで低下。30年固定金利住宅ローン自体はわずか0.02ポイントの下落を見せるにとどまったが、一般的に経済情勢が住宅ローンに反映されるには時間を要することから、「今後住宅ローンの金利がさらにさがる」という可能性が出てくる。

住宅ローンの金利がさがれば、必然的に住宅価格が跳ねあがる。同じ所得でより高価な住宅を購入することが可能になるからだ。

またこれまでは英国、特にロンドンに熱狂していた海外投資家の関心がニューヨークやロサンゼルスといった米大都市に移行する可能性もある。

そうなればロンドンが体験した「海外投資家による大都市バブル」が米国を直撃することになる。

住宅不足が深刻化する米大都会

全米リアルター協会のチーフエコノミスト、ローレンス・ユン氏は、住宅価格が国民所得をはるかに上回る速度で高騰している点を指摘。「テナントやファーストタイム・バイヤーにとって困難な状況になりつつある」との懸念を示している。

米国では利上げしたにも関わらず、今年に入ってからも住宅バブル再来を匂わせる要因が多発している。

昨年は所帯数に100万以上の増加が見られたが、実際に建設された住宅数は62万軒。単純に計算しても、すでに43万軒不足していることになる。

ファーストタイム・バイヤー制度(初めての住宅購入者に政府から資金援助が提供される)もわずか3%減と、住宅購入への需要は安定を通り越し、過剰期に突入する気配が濃厚だ。

こうした状況は英国の住宅バブルと酷似するものがある。海外投資家やBuy To Let(投資目的の賃貸用住宅)オーナーによる不動産の買い上げに、急増する移民問題が拍車をかけ、英国は深刻な住宅不足に陥っている。

また長年にわたる政府の住宅建設計画は、いまだ実現されていないに等しい。

その結果、英国では近年の異常なまでの住宅価格高騰にあたり、住宅価格が最低40%下落するか、あるいは所得が10倍に増えない限り、市場のバランスがとれない−−という危険なレベルに到達。多くの専門家が「大規模な住宅バブル崩壊が秒読みに入った」という見解を示している。

Brexit決定前に予告されたほどの衝撃が、いまだ英不動産市場を襲っていないため、「ポンド安で海外投資家からの投資がさらに増える」との楽観的な見方もでてきているが、住宅価格への影響が顕著に表れるのに時間がかかるのであれば、その真偽が判明するのはもう少し先の話になるだろう。(ZUU online 編集部)

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