全9地域中2地域で景気判断を引き下げ
7月7日に日本銀行が公表した「地域経済報告(さくらレポート)」によると、全9地域中、中国、九州・沖縄を除く7地域で景気の改善度合いに関する判断を据え置いた。
中国では生産面等で一部に弱めの動きがみられるとして、九州では熊本地震の影響がみられるとして、それぞれ判断を引き下げた。その他の地域では、新興国経済の減速に伴う影響などから輸出や生産面に鈍さがみられるものの、国内需要は設備投資が緩やかな増加基調にあるほか、一部に弱めの動きがみられる個人消費も雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移していることから、景気の改善度合いに関する判断に変化はないとした。
業況判断は8地域で悪化、EU離脱の影響を織り込まず実態はさらに悪化の公算
「地域経済報告(さくらレポート)」と同時に公表された「地域別業況判断DI(全産業)」をみると、全9地域中、北海道を除く8地域(東北、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)で前回調査(3月)から悪化した(図1)。
前回調査からの悪化幅をみると、熊本地震の影響で九州・沖縄(▲9ポイント)が最大となり、次いで四国(▲5ポイント)、中国(▲4ポイント)と続いている(図2)。前回調査では全9地域中6地域で悪化となったが、今回調査でも広範囲にわたって悪化するなど景況感は停滞感を一段と強めている。なお、英国のEU離脱の影響を殆ど織り込んでいないため、実態はさらに悪化している可能性が高い。
先行き(9月)についても、九州・沖縄を除く8地域で今回調査から悪化し、北陸、東海、近畿では水準がマイナスに転じるなど悲観的な見方が示された。今回調査からの悪化幅は、北陸(▲8ポイント)が最大で、次いで中国(▲6ポイント)、北海道(▲5ポイント)と続いており、九州・沖縄を除く8地域で引続き悪化するなど先行きも不透明感が高まっている。
なお、足元では英国のEU離脱を受けて円高・株安が進行しており、これまで「回復している(続けている)」「拡大している」「持ち直している」等としていた景気判断が次回調査(9月)でさらに下方修正される可能性が高い。
製造業の業況判断は現状、先行きともに6地域で悪化
製造業の業況判断DIは、全9地域中2地域(北海道、近畿)で改善し、6地域(北陸、関東甲信越、東海、中国、四国、九州・沖縄)で悪化した(東北は横ばい)(図3)。
7月1日に公表された短観(6月調査)では、原油をはじめとした国際商品市況の改善を受けて一部の業種で企業マインドの改善がみられる一方で、円高や新興国経済の減速による輸出の減少、国内需要の低迷などから輸出関連を中心に悪化が示された。
地域経済報告(さくらレポート)においても、輸出依存度が比較的高いはん用・生産用・業務用機械や輸送用機械などで悪化が鮮明となり、前回調査(3月)に続き円高や新興国経済減速の影響を色濃く反映する結果となった。
また、輸送用機械は熊本地震による供給網の寸断や自動車メーカーの燃料費不正問題なども影響したとみられる。一方、国際商品市況の持ち直しが収益改善に寄与する鉄鋼や金属製品などが多くの地域で景況感の改善が示されたほか、円高の影響で原材料の輸入コストが下がる食料品は高水準を維持するなど明るい材料もみられた。