中国は世界秩序の中心ではない。
このところ中国の近隣外交にろくなことはない。5月に就任した台湾の蔡英文総統は、中国の警告や圧力に馬耳東風を貫き、国民の支持を伸ばしている。香港には反中運動がうごめき、ベトナム、フィリピンとは南沙諸島で対立。インドネシアの女傑、スシ海洋・水産相は、違法操業の中国漁船を爆破したことで、国内外でスターになった。
さらに忠実だった韓国の朴槿恵まで意向に逆らい、アメリカの最新鋭迎撃ミサイルシステム「THAAD」の韓国配備を決定した。北朝鮮はとっくにコントロールが効かない。それらに比べれば、今回の安倍改憲勢力大勝は些細なニュースだろう。もはやインテリの間では、中国の近隣外交政策は失敗、と語られ、政府の足元はぐらつき出している。
国際司法裁判所の判断が出た直後、12日夜7時のCCTVニュースは、7時12分から27分まで15分かけて中国政府の立場を表明した。最初の8分間は文字放送だった。外相はフィリピンと交渉すると発言し、あくまで2国間問題を強調した。
中国と中国人は、一対一で対峙している限り、簡単に負けるようなことはない。あきらめて投げ出してしまうことはないし、あらゆる手段を駆使することにためらわない。しかし今回の国際法に対してはどうだろう。相変わらず利益誘導による各個撃破しか戦法がないのなら、もはや展望は開けない。
古代・中世の王朝時代、中国皇帝は東アジア秩序の中心にあった。今中国は世界秩序の中心ではない。国民はとうにわかっていて、欧米にあこがれすら抱いている。しかし指導部は今でもそうだ、と国民の遺伝子を呼び起こしたい。これが時代錯誤でなくてなんだろう。とにかく2016年夏、中国外交は重大な岐路に立った。日本にも必ず何らかのアプローチをしてくるだろう。(高野悠介、現地在住の貿易コンサルタント)
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