塩漬け株,ロスカット,投資家
(写真=PIXTA)

「5月に株を売れ」と言われますが、結局5月の暴落はありませんでした。ただ、本来「5月に株を売れ」ということは5月をピークに株式相場が下がるということであり、6月からの急落に備えよというようにも考えられます。今年も年初からの急落で大きく下落し、どうなることかと思ったが追加緩和への失望感や米国利上げに対する懸念などがあるなかで、どうやら底入れからの戻りを試す動きになってきています。

5月末までは今年に入って初めての5連騰となっており、米国利上げが取りざたされるなかで堅調な地合いが続いています。それでもまだ日経平均や日経ジャスダック平均も昨年8月の高値から大きく下落した状態であり、「塩漬け」となっているものが多いのではないかと思います。東証マザーズ指数は上昇しているのですが、一部の銘柄の影響で指数が上昇しているだけで、乱高下の激しい市場なので大きく値上がりしたところで買いついて塩漬けとなっている向きも多いのではないかと思います。

塩漬けとならないようにロスカットをする方法や塩漬けになってしまった場合に戻り相場で取り返す方法なども検証してきましたが、今回はどういう局面で塩漬けになりやすいか、どういう性格の投資家が塩漬けになりたいかを検証し、もし自分がそうした性格であるのならば塩漬けを作らないためにどこに気を付ければ良いかということを考えてみましょう。

その前に、塩漬けにならない投資家というのは二通りあって、一つはしっかりと「買う水準」「ロスカットの水準」「利益確定の水準」を決めて、その通りできている場合です。自分で決めたシナリオ通りにできていれば、塩漬けということはありえないのです。また、いったん株を買ったら、利益が出るまで配当や株主優待をもらいながら「放っておく」という投資家です。売らないのですから塩漬けと同じことなのですが、塩漬けを楽しんでいる、つまり株式の保有を楽しんでいるということで特に塩漬けを解消する必要もないという投資家です。

塩漬けになるケースというのは典型的には「今日買って、今日中に決済をしてしまおう」と買いついた株が下がってしまったので、「明日、少し戻ったら売ってしまおう」と方針を変更してしまうというケースです。そもそも、買い注文を出すときからいつ売るか、あるいはいくらになったら売るかを決めていないのですから、漫然と「利益が出ているから」ということで売り、「損をしているから」ということで売らないということで利益は少なく、損失は大きくなるのです。

つまり、保有している銘柄はすべて「塩漬け」ということになっているということが多いのではないかと思います。こうしたことになる典型的な例をいくつか挙げてみると、一つは「ロスカット」の水準を決めていないことで、ロスカットができない投資家、また、ロスカットの水準を決めていても、「明日、戻ったところでロスカットをしよう」というように、決めたことをしっかりと守れない投資家は塩漬けばかりが増えます。

ロスカットしなくても良い買い方と売り方をしよう

また、良くあるパターンとしては、高くなったから買うという投資家もいます。こうした投資家は「高くなったのだからさらに上がるだろう」と思って買うのですから、買ったあとに下がって場合にすぐにロスカットをしなければならないのですが、ロスカットできず、急落でもしようものなら、「急落したから急反発となったところで売ろう」というように考えて、売りそびれ、「塩漬け」となってしまうのです。

いずれにしても塩漬けとなるには「ロスカット」ができるかどうかということなのですが、何でもかんでもロスカットをしていたのではまったく利益が出ないということになるのですから、ロスカットよりも「ロスカット」をしなくても良い買い方と売り方をすればいいということなのです。

塩漬株

例えば、富士通 <6702> のチャートで見た場合、底入れからの戻り相場で利益を出そうと考えた場合、1のところで「抜けたから買う」ということをすると、2のように75日移動平均線で上値を押さえられる可能性もあるわけで、結局、3のところでロスカットをするはめに陥ることになります。逆に4のところで抜けたからということで買って、大きめの陽線のあとの十字足、あるいは次の陰線で売れば何の問題もないのです。

また、例えばソフトバンク <9984> を矢印のようなところで買ってしまい、「明日少し戻れば売ってしまおう」と考えていた場合、しっかり戻ってくると今度は「買値を超えてくるのではないか」と思って、結局売りそびれてしまい塩漬けになるということもあるのですから、買い場をしっかりと考えずに買ってしまう、人に煽られて高いところで買ってしまう癖のある投資家は塩漬けになりやすいのです。

また、高値を付けてからすぐに「安くなったから」と言って買う投資家も多いのですが、「高値で買っている」ということには違いないのですから(安いからと言って買わない方が良いのですが)しっかりとロスカットをしなければならないということなのです

清水洋介 証券経済アナリスト
大学卒業後、大和証券、ソシエテジェネラル証券、マネックス証券を経て投資情報サービス会社「ピクシスリサーチ」を設立(現・アルゴナビス)、「チャートの先生」「投資のプロ」として、講演やセミナー活動等を活発に行なっています。テレビや雑誌などでも投資についての解説、講義なども行なっています。(記事提供= 株主手帳 7月号)

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