公開企業のM&Aに立ちはだかる創業家

出光創業家が昭和シェルとの経営統合に反対する本質的な理由は、社風が全く異なる外資系企業との統合により企業文化が変質することへの危惧だとみられる。

社員を家族の一員とみなし定年制を設けず人員整理もしない代わりに労働組合の設立を認めず残業代も支払わないといった独特の経営は、2006年の株式公開により少しずつ変質している。創業家はそれが完全に変わってしまうと考えているのではないか。

創業者の出光佐三が掲げた5つの主義方針(人間尊重、大家族主義、独立自治、黄金の奴隷たるなかれ、生産者より消費者へ)は何れも立派なものだが、本来その実現に向けた道筋は少数株主の創業家ではなく経営陣が考えるべきことだ。

公開企業は不特定多数の株主が所有するものである。特定少数の株主が強い影響力を発揮することは制度の趣旨に反する。創業家は財務体質の悪化により株式公開せざるを得なくなった段階で、所有と経営が一体化した非公開時代に醸成された企業文化が変質することを受け入れるべきだった。

公開企業ではないがサントリーホールディングスも2010年に創業家の判断でキリンホールディングス <2503> との経営統合を破談にした。当時、サントリーの佐治信忠社長(当時)は「オーナー会社の良さはパブリックカンパニーにはなかなか理解できない。サントリーの111年の歴史、創業家と会社のかかわりを見てくれれば、わかってもらえると思った。」と述べている。

創業者や一族が自らの信念を大切にすると同時に不特定多数の株主に支えられる公開企業のコーポレートガバナンスのあり方を理解しなければ、M&Aなどによる抜本的な企業改革は進まないだろう。(ZUU online 編集部)

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