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(写真=PIXTA)

現在、世界経済で関心の高いトピックの一つといえば、米国の利上げだろう。世界の株式市場や為替市場などに多大な影響を与える米国の利上げについて見ていこう。

米雇用統計は米国の景気を反映

米雇用統計は米国労働省が発表する経済指標だ。全米の企業や政府機関などにサンプル調査を行って集計した十数項目の数字が、NY時間で毎月第1金曜日の午前8時30分に発表される (第2金曜日になる場合もあり) 。世界中の市場関係者や個人投資家が発表のタイミングを待ち構えており、雇用統計の結果によって世界中の株価や為替相場が大きく変動する。

米雇用統計が大きな注目を集める理由の一つは、米国の景気との連動性が高いからだ。雇用が安定しないと個人の財布のヒモはかたくなり、個人消費が冷え込む。米国ではGDPの約70%近くを個人消費が占めているといわれており、雇用情勢の悪化はGDPの低下・景気の悪化を招くことになる。逆に雇用が安定していれば個人消費も堅調で、米国景気は好調であるといえる。米国の景気を判断するのに雇用統計は欠かせない指標なのだ。

FRBの金融政策にも大きな影響を与える

FRB (連邦準備制度理事会) は物価の安定とともに雇用の安定を重視しており、雇用統計は利上げをはじめとするFRBの金融政策にも大きな影響を与える。イエレンFRB議長が6月5日の講演で「最大限の持続可能な雇用の確保」に触れていることからも、それはうかがえる。雇用統計の数値がよければ、労働需要が強く、景気も底堅いということを示す。労働需要が高ければ平均賃金が上昇しやすく、インフレ懸念につながり、FRBが利上げを行う可能性が高まることになる。

例えば、強い雇用統計を受け米国景気が順調に回復しつつあると判断したFRBは2015年12月、9年半ぶりとなる利上げを発表した。この時のFOMC (連邦公開市場委員会) の声明では利上げの理由について、「雇用は今年大幅に改善し、物価が中期的に目標の2%に向かうとの合理的な確信が得られている」と説明している。

またイエレンFRB議長は2016年5月27日にハーバード大学での講演で「経済成長が想定通り継続し雇用創出が続けば、FRBは今後数ヵ月以内に利上げすべきだ」との認識を示した。

このように、利上げのタイミングを計るには雇用情勢を見ることが非常に重要となる。