日銀がこれまでの誤算を認め、修正の必要性を認められるか

企業の資金需要が増加しても、日銀が緩和的な金融政策により、名目金利の上昇はインフレ期待の上昇なみにとどまり、実質金利は低位安定する。総賃金の拡大と名目金利の上昇、そして資産価格の上昇は、インフレ期待が上昇していても、家計の将来の資産蓄積のペースへの安心感と消費の拡大につながる。

家計と企業の活動が活性化すれば、税収の増加などにより、財政政策を中立的に戻すだけで、財政収支は著しく改善していくだろう。デフレ完全脱却を目指し、財政政策、成長戦略と構造改革による企業活動の活性化で生み出したネットの資金需要を、ポリシーミックスとしての日銀の金融緩和の継続で、間接的にマネタイズしてサポートするという、財政政策が主で金融政策が従であるというスタンスに転換できるかが注目である。

財政政策による需要拡大策の軽視と、緊縮財政により社会保障の不安を減じる、安心効果への過信が、ポリシーミックスを機能させなかった。金融政策への過度な偏重につながり、デフレ完全脱却への強い動きにつながらなかったことが、日銀へのマーケットの不信感の原因になってしまったことは、明らかであるように思われる。

2%の物価目標は、「2年」という期限を設けたものではなく、中長期的に目指すものとされ、その実現まで粘り強く金融緩和を継続していくスタンスへ変化するとみられる。

物価目標を早期に実現するためには、財政政策による需要拡大策、そして成長戦略と構造改革による企業部門の刺激策が重要で、物価目標の実現のためには政府との協働と時間が、必要であることを確認することになるだろう。

日銀が、消費税率引き上げなどの緊縮財政が、物価目標達成を阻害してきたこと、そして金融政策だけでデフレから完全脱却することは、困難であることを認められるのかが焦点である。そして、2%の達成時期は、財政政策や海外経済・マーケットの動向にも依存すると判断し、早期達成には、政府にも一定の責任があることを示す必要がある。

日銀も、追加金融緩和を決定した7月の決定会合で、「きわめて緩和的な金融環境を整えていくことは、こうした政府の取り組みと相乗的な効果を発揮するものと考えている」と異例の声明を出し、ポリシーミックスの考え方に前向きであり、既に路線は敷かれてきているように見える。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト

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