要旨
ビットコインなど仮想通貨への規制について、資金決済法などの改正案が2016年3月4日に国会に提出され、2016年5月25日に成立した。
この改正案は、ビットコイン業者であるMt.Gox社の破綻(2014年2月)や、G7での仮想通貨に対する規制の提言(2015年6月)などを踏まえ、仮想通貨交換業者に対する登録制、情報の安全管理義務、利用者への情報提供義務、利用者の財産の分別管理義務などを新たに導入したものである。
仮想通貨には、通貨と同様の流通性、送金手数料の低廉性・迅速性などのメリットがある一方で、価格が不安定であることや、マネーロンダリングなど犯罪の温床になりかねないことなどがデメリットとされている 。
仮想通貨最大の規模となっているビットコインを中心に、これまでの経緯や現状の分析を通じて、仮想通貨の「光」と「陰」を明らかにしたい。
はじめに
ビットコインなど仮想通貨への規制について、資金決済に関する法律(資金決済法)などの改正案が2016年3月4日に国会に提出され、2016年5月25日に成立した。
この改正案においては、仮想通貨交換業者に対する登録制、情報の安全管理義務、利用者への情報提供義務、利用者の財産の分別管理義務などが新たに導入されている。
仮想通貨についての法整備は、ビットコイン業者であるMt.Gox社の破綻(2014年2月)や、G7での仮想通貨に対する規制の提言(2015年6月)などが背景となっている。
仮想通貨の約9割を占めるビットコインの概念は2008年10月、Satoshi Nakamoto(中本哲史)により、はじめて紹介された。
2009年に実際の運用が開始され、2011年2月にはビットコインの市場価格が初めて1ドルを上回り、現在の相場は約600ドルとなっている。
通貨と同様の流通性、送金手数料の低廉性・迅速性や、投資商品としての魅力、取引についての匿名性の高さなどがビットコインのメリットとされているが、一方で、価格が不安定であることや、マネーロンダリングなど犯罪の温床になりかねないことなどがデメリットとされている(1)。
本レポートでは、仮想通貨において最大の規模となっているビットコインを中心に、これまでの経緯や現状を分析・報告することとしたい。
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(1)岡田仁志、高橋郁夫、山崎重一郎『仮想通貨 技術・法律・制度』、東洋経済新報社、2015年6月、畠山久志「ビットコイン(BITCOIN)について(1)」『New finance』Vol.45No.7、地域金融研究所、2015年7月。
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