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(写真=PIXTA)

民進党代表になった同党所属の参議院議員、蓮舫氏が日本と台湾籍の二重国籍だったことが騒がれたが、なぜ問題なのか。突き詰めると国籍法に反しているというのがその理由のようだが、むしろ発言が二転三転した点や、認識の甘さに対する批判が大きかったようだ。

国籍法違反ではあるが現実的には問題ない?

そもそも日本政府は台湾を国家として承認していないので、国籍といっていいか議論はあろうが、既に多くのメディアでも国籍問題として取り上げられているので、ここでも国籍という表現を用いることとする。

蓮舫氏の場合、国籍法に反してはいるが特に罰則がなく、国が他国に確認を取るということもない。ただ一般人が二重国籍状態であるのと、政治家、国会議員が二重国籍であることは別と考える人が多いということだろう。たしかに国の方針を決める時に、どちらの国益を優先させるのか、疑問視する声があがってもおかしくない。

国籍法に違反はしているが、二重国籍でも国会議員になれないことはない。外国では日本とペルーの二重国籍を持つ元ペルー大統領のアルベルト・フジモリ氏のような例もある。
しかし今回問題になったのは、党のトップを目指す者が事実確認を怠ったままマスコミの質問に対し、反射的に回答してしまったリスク管理の危うさなのかもしれない。

「父の台湾、母の日本という2つのルーツを持つ」ことは決して悪いことではない。しかし認識の甘さから、党代表選の最中も発言は変化している。9月3日放送のTV番組では「生まれたときから日本人で台湾籍は抜いている」「18歳で日本人を選んだ」と言ったかと思えば、同月6日の高松市の記者会見では「17歳」に訂正していた。

さらには「生まれたときから日本人」という発言も撤回され、出生当時の日本の国籍法とつじつまが合わなくなり、7日の産経新聞のインタビューでは「法律的には昭和60年から日本人だ」と訂正発言をしている。

こうして「国籍」というものに対する意識の希薄さ、事の重大さ、「問題点を検証しないまま言動する軽さ」が党内外からも批判を浴びる結果につながったのだ。

二重国籍者の扱いはあまり明確ではない

日本の国籍法14条では、外国の国籍と日本の国籍を有する人(重国籍者)は、22歳に達するまでに(20歳になった後に重国籍になった場合は、重国籍になった時から2年以内に)どちらかの国籍を選ぶことになっている。日本国籍を選ぶと外国籍の離脱しなければいけないが、外国籍の離脱は努力義務にとどまっている。罰則があるのは虚偽の届出をした場合のみだ。

かつて外務公務員は、配偶者が日本国籍を有さない場合や外国の国籍を有する場合は外務公務員の欠格事由となっていた。国家公務員の場合は、人事院規則8118第9条で「日本の国籍を有しない者」は採用試験を受けることができないとある。しかし二重国籍者を排除していないのが現状だ。

では地方公務員ではどうか。基本的に「外国籍の職員については、公権力の行使に当たる業務又は公の意思形成に参画する職に就くことができない」と規定されていて、二重国籍者には一定の制限を与えている。

あるいは、国会議員は公職選挙法第10条により、地方議員の場合は地方自治法第19条で「日本国民」であることを要件としているだけである。要するに国籍条項が規定されてはいるが日本国民を要件とすると言ったものが多く二重国籍者の扱いに関してはあまり明確ではないのである。

米国の場合はどうか 大統領は出生時に合衆国の国籍保持が条件

人種の多い米国はどうか。米国籍保持者であれば「生まれつきのアメリカ人」か「市民権取得者」かにかかわらず、誰でもがたいていの地位には就ける。ヘンリー・キッシンジャーは旧チェコスロバキアからの亡命者でありながら国務長官にまでなっている。

しかし大統領は別だ。大統領選の被選挙権は、35歳以上で米国在留歴が14年以上などという資格のほかに、生まれた時点で合衆国の国籍を持っていなければ得られない。

オバマ大統領の場合は、ハワイ出身であるものの、父親がケニアからの留学生であったので「ケニア生まれではないのか」とか「出生証明書を出せ」と訴えられたことがある。

実は米国では「生まれながらの米国人かどうか」が議論となった大統領候補が他にもいる。2012年の大統領選に共和党から立候補したミシェル・バックマン氏はスイス国籍を疑われた。同じく12年の選挙で共和党候補となったミット・ロムニー氏の場合はメキシコ人として疑われている。あるいは今年の大統領選に共和党から立候補していたマルコ・ルビオ氏も「キューバ人では」と言った具合で、こうした騒動は珍しくないようだ。(ZUU online編集部)

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